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(6)シートゥルースによる比較・検討

SARは海面・流氷の粗度などによる散乱強度を画像として表示するため、SAR画像上に現れるパターンは肉眼で観察される現象と大きく異なる場合がある。このため可視画像と比較することはSAR画像の判読技術の蓄積という意味で重要である。

また、SAR画像どうしであってもパラメータ(波長、入射角)の違いによる画像上の差があるものと考えられるため、この点についても検討を行う必要がある。

3] 解析方法

SAR画像と同時に取得された可視画像(SPOT/HRV)及び海上保安庁のビーチクラフト機による流氷分布図とを目視により比較して判読結果の検証を行った。ビーチクラフト機とJERS-1/SAR画像とはオーバーレイを作成し比較した。SPOT/HRV画像については近赤外バンドを赤に割り当てるフォールスカラー画像として示した。

また、可視画像(SPOT/HRV)と「そうや」搭載ヘリによる目視観測図とについてもオーバーレイを作成し比較した。

2] 解析結果

以下、シーン別に比較結果を示した。なお、衛星画像どうしの比較に際しては両者の共通範囲を切り出して比較した。

1) '98年1月27日

JERS-1/SAR画像とビーチクラフト機による目視判読結果を図17に重ね合わせて示した。

分布については幾分ズレがみられた。目視観測で沿岸部にグリースアイスとニラスが分布しているとされている点は、SAR画像上ではより沿岸部に暗い海域が分布しておりここを指すものと考えられた。

北東部には両者とも開水面が観測されたが、位置にはずれが見られた。

全体に分布する砕氷、小板の部分はSAR画像では比較的きめの細かいパターンを示し、蓮葉氷、小板、板氷などが分布する北西部とはSAR画像でも明瞭な違いが見られた。

全体に位置のずれはあるものの定性的な判読結果は比較的よく一致した。

2) '98年1月28日

JERS-1/SAR画像(図18)とSPOT/HRV画像(図19)を比較、判読した。

SAR画像では、中央左寄りにおいて流氷が渦を巻いている状況までやや不明瞭ではあるが確認できた(図上1])。しかし、流氷と海面とをはっきりと識別するのは難しく、両者の境界の判読は困難であった。可視画像において細かな流氷が非常に密接していると思われる部分についてはSAR画像でも高い輝度値を示した(図上2])。また、大きな氷盤で、可視画像では白く観測されたもの(氷盤の上に積雪がある状態とも考えられる)がSAR画像では低輝度に示される場合(図上3])が見られた。逆に可視画像では暗く海面と判断される部分でもSAR画像では白く写っているもの(図上4])が見られた。これは可視画像の解像度より小さくとらえきれなかった細かい流氷、もしくは薄い新成氷が重なり合っていて粗度が大きくなったものがSAR画像上で現れたのではないかと推測される。また薄い氷盤、密接度の低い細かな流氷は可視画像でも海面との識別が難しかった。

 

 

 

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