流氷の判読に関しては、航空機SARによる検証実験(Onstott, 1992)、ERS-1と船舶の同時観測(Frette st al., 1992)などがあり主として1年氷と多年氷の分類などが行われている。
日本においても第一管区海上保安本部とRADARSAT社とによるSAR画像からの流氷判読研究がなされている。
密接度については主としてマイクロ波放射計による研究例が多い。
氷厚に関してはサロマ湖における実験の結果、後方散乱係数と氷厚に負の相関があることが報告されている(中村他, 1998)。
流氷の移動方向・速度についてはSEASAT(Leberl et al., 1983)、ERS-1(Tomas et al., 1995)、RADARSAT(角田and竹内, 1998)などがあり、流氷の回転、移動を検出するアルゴリズム及び数値モデルによる移動予測の研究が行われている。
(4)平成9年度解析結果
平成9年度の解析結果の概要を以下に取りまとめた(日本水路協会, 1998)。
1] 肉眼による判読
'97年3月26日のRADARSAT/SAR画像をもとに流氷分布、密接度を判読した。画像上では流氷域の中に白い氷盤(流氷のうち周辺より高い輝度を示すまとまった領域)、黒い氷盤
(流氷のうち周辺より低い輝度を示すまとまった領域)、その他の流氷が見られ、海面には白い海面(風波によると思われる細かいパターンにより高輝度に表現される領域)と対照的に黒い海面、さらに山影の黒い海面などが観察された。
流氷と海面とは肉眼によってある程度判別することが可能であり、流氷分布・密接度ともに判読可能であった。ただし、流氷の密接度が低く風波による散乱が強い領域については流氷分布を判読することは困難であった。
2] 2値化による流氷分離
海面の高輝度域と流氷域との輝度値が重なっていることから、SAR画像の輝度値の2値化による流氷分布の算出は不可能であった。
3] 標準偏差/平均比画像による分離
平成9年度では、SAR画像を小領域に分割、それぞれの小領域で計算した平均と標準偏差を用いて標準偏差/平均比を算出し画像として表示するという解析手法を導入した。図2に解析の流れを示した。同時に、白い氷盤など代表的な小領域について平均‐標準偏差/平均の散布図を作成し各領域の特徴を検討した。
流氷分布は標準偏差/平均比画像を2値化することで、流氷域と海面の高輝度域とを分離することができた。
しかし、白い氷盤が海面と判断されてしまう点、暗い海面の周辺に擬似的に流氷が見られた点が課題であった。
密接度に関しては、標準偏差/平均比画像から2値化して求めた分布をもとに小領域内で流氷と判断されたピクセルの割合から算出した。全体に低い密接度となったが、風上で密接度が高くなる傾向などはよく再現された。