1 ウーロンゴン大学海洋政策研究センター(12月2日)
(1)訪問先機関の紹介
センターは、オーストラリアのみならず、アジア・太平洋地域を代表する海洋政策研究のメッカである。ウーロンゴン大学の当研究センター所長サム・ベートマン(Sam Bateman:オーストラリアではバイトマンと発音)氏は元オーストラリア海軍中将。
海洋政策研究に関しては、オーストラリアには当センターの右に出る研究機関は存在しないと言って過言ではない。実際、オーストラリアの他の有力な研究機関やCSCAP関係者からは「海洋政策の諸問題ではサム・ベートマン氏の右にでるものはいない」という海洋政策研究の権威である。
センターはアメリカのデラウェア大学やイギリスのウエールズ大学の海洋政策研究プログラムをモデルとして1994年に設立された。オーストラリアの連邦および各州の海洋政策実務者(海軍将校および民間人)に対し、国際連合海洋法の発効に伴って変化・複雑化しつつある海洋政策について、より高度な専門知識を授けることを目的とする体系的な海洋政策教育プログラムを実施している。学生の3分の2は海外の海軍将校(留学生)である。
海洋政策教育プログラムの内容は.国内の海洋政策、海洋政策の国際的問題、海洋輸送、海洋環境管理・計画、海洋環境法、海洋法、シー・パワーの歴史と政治(学)などである。
視察団のセンター訪問時には短期コース「海洋法・海洋規制とその執行」が実施されており、学生は、オーストラリア海軍将校(特に弁護士資格者)、マレーシア、ブルネイ、パプア・ニューギニア、シンガポール、ガーナの若手海軍将校であった。
センターは、中華人民共和国(以下中国と表記)青島海洋大学およびオーストラリア国立大学(北東アジア研究プログラム)とともに、海洋管理(ocean management)における地域的協力・対話プログラムも実施している。
(2)討論・意見交換概要
当センターでの会合のオーストラリア側の出席者は、サム・ベートマン研究所所長の他、オーストラリア連邦警察から出向してセンターで教鞭をとっている海洋犯罪専門のドグ・マッキノン(Doug MacKinnon)氏と、ピーター・キング(G.Peter King)国際関係論教授であった。キング教授はウーロンゴン大学歴史・政治学部で国際関係論プログラムを統括している。
●ブリーフィング
日本側から、川村団長と大越敏彦団員より日本側配布物の説明があった。その後、ベートマン氏から当センターの概要説明が行なわれ((1)紹介参照)、センター定期刊行物の説明が行なわれた。その過程で、当センターの政策提言が連邦政府の「オーストラリアの海洋政策」(Australia's Ocean Policy)に反映されていることが強調された。さらに、当センターの海洋政策研究が、信頼醸成措置(Confidence-Building Measures:CBMs)に重点を置きその最近の成果は「CSCAP Memorandum No.4」に集約されているとの説明があった。2