(4)日米豪韓の対アジア政策協調の重要性
アジア・太平洋諸国の安全に対する考え方は多様であり、「公海の自由航行」問題を考慮する場合に性急に結論を求めることなく、北東アジアの安全保障協力の前提である日米安保条約が持つ地域安定化機能をいかに有効に使うかにあり、日本のイニシアティブでいかに「日米安保体制」を有効に機能させつつ、成熟した多数の国家による安全保障環境(多国間の安全保障の枠組み)を造りあげて行く必要があり、日本のイニシアティブ発揮が強く求められている。
その方策としては、「日米安保」や「米豪安保」などの2国間の「同盟関係の枠組みを維持している国」と、ASEANのように多数の国が緩やかな協調体制を維持する「マルチの枠組み」を維持している国との連携など、アジアの安全保障の協力体制には2つの重層的枠組みが必要なように思われる。日米韓それに豪州、さらにはカナダなどのアメリカと2国間防衛条約を締結している国家間の同盟的な協力関係や任務分担の協議を軸に、これらの国が協調を最初に構築し政策協調や調和を図り、次いでARFのように中国やロシアを加えたより広範な、「なだらか」なダイアローグの組織と、アジアには重層的協力関係の二つのシステムを構築して行くことが望ましいのではないであろうか。
一方、航行の自由という言葉からは、「商船の航行の自由」を主に論じているように思われがちであるが、航行の自由の確保にとって緊要な要素の一つは米第7艦隊の作戦行動可能海洋を確保することであり、海上交通の安全確保について研究を進める場合、ある程度、軍事的な側面も含めた安全保障問題に踏み込まざるを得ないであろう。