一方、アジアにおける安全保障の枠組みは、示すような日米安保条約、米韓相互防衛条約、米比相互防衛条約、台湾関係法(米華相互防衛条約)などのアメリカを軸とした2国間相互防衛条約による安全保障体制と、アンザス(太平洋安全保瞭条約 Pacific Security Pact:通称ANZAC条約)や、5か国防衛取り決め(Five Power Defencw Agreement)などの多国間安全保障体制とが並立している。
2国間安全保障体制
1]日米安保条約
2]日韓相互防衛条約
3]米比相互防衛条約
4]台湾関係法(米華相互防衛条約)
多国間安全保障体制
1]アンザス(太平洋安全保障Pacific Security Pact)
2]東南アジア条約(東南アジア集団防衛SEATO)
3]東南アジア諸国連合(ASEAN)と拡大東南アジア連合(Assean Regional Forum)
4]5か国防衛取り決め(Five Power Defence Agreement
これらアジアの安全保障体制の有効性をみると、2国間相互安全保障体制の米比相互防衛条約は、ソ連崩壊によるアジアの緊張緩和とフィリピンの民族主義の興隆により、スーピック海軍基地及びクラーク空軍基地の貸与協定の延長がフィリピン上院において承認されなかったため、アメリカ軍は撤退し米比相互防衛条約は存続しているものの実効性に問題がある。米韓相互防衛条約は米軍の駐留も認められ、在韓米軍も国境付近に展開されており、韓国の防衛には自動介入に近い状況にあり、日米安全保障条約よりも強力である。これに比べて日米安保条約には各種の制約があるが、日本、特に沖縄の戦略的価値のため極東の安全保障には不可欠な条約となっている。台湾との米華相互防衛条約は米中国交正常化により失効したが、アメリカが国内法で台湾の防衛を規定し、武器輸出などを含め実質的に台湾の安全を保証し、台湾も米軍に対する基地の供与を規定しており、中国の重なる抗議にもかかわらず現在も機能している。そして、アメリカはこれらの条約などに基づき、アジア・太平洋地域に10万人体制を維持することと明言し、日本に3万6900人、韓国に3万5920名をはじめ、次表に示す各地に兵力を配備している。
2. 地政学と歴史からの考察
(1)大陸型民族と海洋型民族の価値観の比較
アジア・太平洋地域の平和と安定をどのように構築すべきであろうか。アジアの安定と繁栄を海洋国家と大陸国家という視点、地政学、それに歴史的遺訓をもとに考えてみたい。
ある一定の気象や地形などの、特定な自然環境に囲まれて育つと、生活様式、風俗習慣、価値観などがその土地特有なものとなるものであり、人が育った環境の影響を受け個性や個癖ができるように、国家もその長い歴史の中で試練を受け、国家としての性格を造り、その行動様式には一定のパターンが生まれ育つものである。これを大陸国家と海洋国家という視点で比較してみると、大陸国家はフランスやドイツ、ロシアの例を挙げるまでもなく、常に自らを世界の中心と考える傾向がある。