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群島航路帯通航とは、「通常の形態での航行及び上空飛行の権利が継続的な、迅速なかつ妨げられることのない通過のためにのみ行使されることをいう」(53条3)。これは、国際航行に使用されている一定の海峡に適用され得る通過通航制度に類似している(9)

このように、群島国として広大な海域に対する自国の権利が保証される一方で、インドネシアは、これに伴う大きな義務を負うことになった。たとえば、国連海洋法では、「航行の自由」と「資源の独占」という海洋利用に関する対立しあう主張を勘案して「排他的経済水域」が設定されたが、これは、沿岸国の権利ばかりでなく、義務をも定めたものである。すなわち、海洋を安定的に利用し、かつ、持続的に開発するために、国連海洋法上の義務の履行が確保されなければならない。

さらに、自国の領海で発生する海賊や密輸などの不法行為の取り締まりも必要である。近年、インドネシアの領海や近傍の航路帯で海賊被害が続出している(図-6)。このような場合、広大な領海や経済水城の管理のために充分な艦船や航空機を保有しなければならないことを意味し、とくに開発途上国にとっては非常に厳しい規定といえる(11)。ィンドネシアの場合、果たしてこのような能力を有しているのであろうか。そこで、次にインドネシア海軍の現況について見ることにする。

 

図-6 海賊の発生場所(10)

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(9)海上自衛隊幹部学校『指揮官幕僚のための国際法規』1997年、30ページ

(10)産経新聞、1999年1月26日

(11)高井晋、「紛争の未然防止とOPK:海洋の安定的利用のための新たな活動」、『新防衛論集』第25巻第2号、1997年9月、36〜37ページ

 

 

 

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