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その一方で、1997年の国際通貨危機に伴う経済の混乱の中で、33年間に及んだスハルト体制が崩壊し、各地で暴動が頻発して社会的混乱が続いている。最近では、インドネシア東部マルク州のアンボンでイスラム教徒とキリスト教徒の衝突が起こり、50人以上の死者が出た。このため、ハビビ大統領は、宗教抗争が全国に飛び火しないように国軍に厳戒態勢を取るように指示した(8)

この他にも、独立運動の再燃や暴動の発生が懸念される地域には、首都ジャカルタをはじめ、北スマトラのアチェ、東チモール、イリアンジャヤ、西カリマンタン、スラウェシなどの地域がある。国内の混乱の拡大は、政治・経済の不安定をもたらし、東南アジアSLOCsの安定的な使用にも影響が及ぶかもしれない。

 

(2)国連海洋法とインドネシア

世界最大の群島国であるインドネシアにとっては、国連海洋法によって、広大な海域を領海として自国の主権下に置くことを国際的に認められた。群島国に関する海洋法の規定は、以下のような内容を含んでいる。

群島国は、もっとも外側の常時水面にある礁のもっとも外側の点を結んで群島基線を引くことができる。ただし、群島基線の内側の水域の面積と環礁を含む陸地面積の比が1:1から9:1の範囲でなければならない(47条1、2)。この群島基線で囲まれた内側の水域を群島水城という。群島水域は、群島国の主権下に置かれる(49条、1、2、3)。群島国の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、群島基線から外側に位置する(48条)。

外国船舶は、群島水城で無害通航権を有する(52条1)。ただし、群島国は、自国の安全保護のために不可欠である場合には、群島水域の特定の水域において外国船舶の無害通航を一時的に停止することができる(52条2)。

群島国は、自国の群島水域とこれに接続する領海及びそれらの上空に、外国船舶及び航空機の継続的かつ迅速な通航に適した航路帯及び航空路を指定することができる(53条1)。この場合、外国船舶及び航空機には、群島航路帯通行権が保証される(53条2)。

 

(8)産経新聞、1999年1月24日

 

 

 

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