2 社会経済条件上の特徴
(1) 人口
呉市の人口は、戦前にわが国最大の海軍工廠を擁する軍港として栄えた時期には、人口40万人を超えた時期(昭和18年)があったが、戦後は15万人にまで減少した。そして、戦後は造船、鉄鋼、機械金属、パルプ産業等を中心とする臨海工業地帯として発展を遂げ、昭和50年には24.3万人にまで人口増加をみた。しかし、これをピークにそれ以降は減少が続き、平成7年には呉市の人口は21万人を割り込む状況となっている。この20年間の減少率は13.7%である。また、全県に占める人口シェアは7.3%であり、昭和50年の9.2%と比較して1.9%低下している。
呉地方拠点都市地域を構成する周辺12町においても、呉市人口の受け皿となっている安浦町、川尻町を除く地域では、長期的な人口減少が続いている。そして、呉地方拠点地域の人口は昭和50年の36万人から平成7年の31万人へと14.1%減少している。
一方、広島市、福山市、東広島市では、堅調な人口の増加がみられる。人口規模は、地域の活力を集約する指標ともいえるものであり、現状のような人口減少傾向は、住み良い地域づくりを目指す市民にとって大きな問題である。特に、広島県において、特定の都市への高次都市機能の集中化傾向が見られる中で、圏域の中心都市である呉市の人口が長期にわたって減少傾向にあることは、圏域全体の活力低下につながる重要な問題であると言えよう。
このような人口減少は、人口の自然動態・社会動態の両指標がともに減少局面にあるという点に特徴がある。呉市では、出生者数の減少により、平成5年から人口が自然減少に転じている。全国的に合計特殊出生率の低下が問題になっているが、県内においては、広島市、福山市、東広島市はいずれも人口は自然増の状況にあり、特に、東広島市は、自然動態が増加基調にある。呉市では、社会減少にも歯止めがかからない状況となっている。ちなみに、呉市と同一都市規模を持った都市で自然減少、社会減少傾向にあるのは、函館市、足利市、大牟田市などごく少数である。