3 中国山地県境市町村連絡協議会(県境サミット)の活動事例
前節でみた事例の中で、中国山地県境市町村連絡協議会(県境サミット)の活動事例をあげている。この活動は、活動の継続性、活動内容の多様性という点で大きな実績を有していること、他の多くの地域のように中心となって牽引していくような都市が存在しないことから、大崎上島の状況にあった特異な事例といえよう。そのため、ここではこの活動について詳細な検討を加える。
(1) 圏域の概要
本協議会は、中国山地の中央部の、鳥取、島根、岡山、広島の4県の県境付近に位置する16の市町村(鳥取県西伯町、日南町、日野町、江府町、島根県広瀬町、伯太町、横田町、岡山県新見市、大佐町、神郷町、哲多町、哲西町、新庄村、広島県西城町、東城町、比和町)から構成されている。構成市町村の総面積は2,695.69km2、総人口108,515人(平成7年国調)で、人口密度は40.26人/km2となっている。構成市町村の総面積の8割を森林が占める典型的な中山間地域であり、人口密度が示すように、過疎地域である。
いずれの市町村も、その属する県の県庁から遠く、情報の伝達が遅いという共通点を抱えている。かつては、「たたら製鉄」や「和牛」の生産、「製炭」といった共通の産業が盛んであり、通婚、通学、通勤、商業圏などの点で、住民間で相互に交流があった。しかし、近年はこれらの産業の衰退とともに交流も衰えていた。また、こうした産業の衰退や過疎化、高齢化はこの地域に共通の課題を多くもたらしている。
(2) 背景と経緯
今日の住民ニーズの多様化に対して個々の市町村が単独で全て応えていくことには、相当な無理、困難がある。それぞれの市町村が属している既存の広域市町村圏も、ややもすると中心都市に集めるといった発想が目立ち、周辺部の町村のことも相補っていくという発想が希薄であるため、住民ニーズに充分応えうる広域行政組織たり得てこなかった。
そこで、既存の広域市町村圏への反省も踏まえて、共通の課題と地域特性とをもった市町村同士が、再び連携を深めていくことが必要であるとの観点から、平成5年8月に、当時の岸郁男日南町長の呼びかけで、本協議会は結成された。