日本財団 図書館


(2) 各種施設づくり(ハードを基調としたもの)による対応方策

古くは戦後すぐの都市計画、もしくは地震など災害後の整備、最近ではバブル期の再開発など、中心部での再開発や区画整理は、数多くなされてきた。ただ、その計画が街に居住する人、商売をする人、もしくは買い物などに集まる人のためになされてきたのかというと必ずしもそうでなく、増え続ける車のために幹線を拡幅し街をニ分したり、近代化という名の下に古い建物を壊したりしてきた。そういった反省から、街に住み易さ、とくに買い物時などの快適さ、ゆとりある空間を求める声が大きくなり、そういった取組もみられるようになった。また最近は中心市街地再活性化ということで、中心市街地の持つ意味が再認識され、多くの投資が一段とされる。逆にいえば、「今まで何もしなかった」といわれた行政から街に暮らす商店主のもとへ、ボールが投げ返されたといえるかもしれない。

 

ア 都市再開発、区画整理による面的な基盤整備

1でみたように、JR跡地などで大規模な再開発が進んでいる。JR駅周辺は中心部にあるところが多く(駅にしたがって商店街が発展したといえるかもしれない)、新たな集積として耳目を曳いているところである。また、小布施町のように小さな一角を区画整理し、それから面的な広がりをみせたものもある。(例:秋田市、金沢市など)

 

イ 中心市街地への都市施設づくり

空き店舗・跡地や店舗の集積などであいた土地を小公園にしたり、カラー舗装、街灯の整備など、「寂れた」イメージの脱却を目指し多くの商店街でなされている事業である。

ただ、それらのメニューとして考えられ、実行されてきたのは、カラー舗装、電線の地中化、アーケードの新設もしくは撤廃、街灯の整備、空き地などを利用した小公園・広場、ベンチやモニュメントなどの配備である。それらの整備事業は、行われた直後は目新しさもあってそれなりに集客を図ることができるが、それだけで満足してしまえば元の木阿弥となってしまう。活性化に成功したところは、商店街の整備を契機に、商店の品揃えの充実や商店街としてのソフト面での取組が継続的になされているところが多い。商店街のインフラ的整備の最近の例としては和歌山市などが挙げられる。

 

ウ 集客性を持った公共施設づくり

以前は駅前や中心部にあった人が集まる公共施設(役所、病院など)が、庁舎や駐車場の狭さ、市域の拡大に伴って郊外へ移転し、中心部が寂れてしまった事例は多い。そういった反省から、人の集積を図るため公共施設を中心街に建設、移転する例が出てきている。(例:郡山市、直方市など)

 

エ 都心部居住のための住宅づくり

中心部では、夜間人口の減少に頭を痛めているところが多い。商店主たちも郊外に家を建て、店に「通勤」している例も多く、人口の減少による日常買い回り品の商店が廃業したりし、中心街の衰退の一助をなしている。また、人口の減少は古くからの祭りなど文化面での担い手不足にも現れ、祭りができなくなったところもある。そういったことから、商店の住宅兼用化もしくは公共による住宅の建設、老人施設の誘致など、人口増に向けての方策がとられている。

計画としては郡山市にみたようにデイサービスセンターなどの誘致や家族が訪問しやすいようにと特別養護老人施設などを建設する動きもある。また水戸市や大垣市のように複合施設の中の1つとしてマンションなどを建設するものもあるが、より安価な市営住宅などを建設し、都心居住を進める方策を検討している自治体の動きもある。

 

オ 交通インフラ・利便性の高いシステムづくり

中心市街地の衰退は車社会に対応できず、駐車場の不足などに始まる例が多い。そこで、車を使わずに中心部へ足を運んでもらおうと、駅やターミナルと中心市街地を結んだり、中心部を巡る無料バスを走らす例も出ている。また、郊外からの集客を図ろうと大型駐車場を建設したりパークアンドライドの実験を行う例もある。(例:釧路市、水戸市、甲府市、大津市など)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION