2) 中心市街地再生の課題整理
1 中心市街地衰退の構造
(1) 中心市街地衰退の構造
都市の中心市街地は商業、業務、文化・娯楽・教育、居住・生活、交通・物流、アメニティなどに関わる都市機能が集積し、長い歴史の中で文化・伝統を育むことによって、「都市の顔」としての性格をもった地域である。
しかし、近年の社会経済環境変化、例えば、中心市街地の本来もっている空間的な制約などからモータリゼーションの進展などへの対応が遅れていること、また、生活者の商業・アミューズメント機能に対する要請の高度化に対応する課程で生じている商業の競争環境変化への対処に遅れていることによって、次頁の図表2)-1に示すような形で中心市街地の空洞化が進みつつある。
中心市街地の衰退を引き起こしている一つの大きな要素は、過去の都市整備の経緯から生じている要因である。
1]モータリゼーションの進展が契機になっているものであり、
・通過交通に配慮した町の構造で商店街が分断されている、
・公共交通の衰退に伴い駅前立地の利便性が低下、
・高密度利用に伴う駐車場の不足とこれに伴う自動車によるアクセスの不便さ、
・オープンスペースが少なく道路が狭いことからする交通安全上の問題、
・相対的な高地価によるオフィス・店舗の高い賃料と利用転換への制約、
などの変化によって中心市街地の立地条件上の弱みが顕在化し、郊外型大型店の優位性が高まっていることである。
2]都市計画の郊外地への拡大が契機になっているものであり、
・郊外部での幹線道路整備や計画的に整備された優良な住宅供給の拡大、
・公共交通体系の位置づけの低下、
・公的集客施設の郊外移転・分散(都市機能の分散化)に伴う来街要因の減少、
・中心市街地エリアの歴史的建造物など資源の有効な利用がなされておらず、都市の顔がみえなくなることによる都市イメージの希薄化、
・都心部居住者の郊外地への移動に伴い中心市街地の地元居住人口が減少し、高齢者主体の町になることによる活力低下・地元購買力の減少、
・高地価が要因となって新規の住宅取得が困難となり、若い人が入ってこない
などの変化によって、域外の人にとって中心市街地が都市の中で特別の意味をもった地域ではなくなってきていることである。この結果、中心市街地のアメニティの低下が著しくなっていることである。