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(2) 地方(ロシア連邦を構成する「構成主体」)の財政権限を定める連邦法

 

連邦構成主体における予算の編成、可決、執行などの原則を定めるロシア連邦法のうち、もっとも包括的な法律は1993年4月に施行された「ロシア連邦を構成する共和国、地方、州、自治州、自治管区、モスクワ市、サンクトペテルブルグ市ならびに地方自治体における国家権力の代議機関および執行機関の財政権ならびに予算外基金の形成と利用に関する権限について」(以下、連邦法第4807-1号と略称する)である。

 

上記の2つカテゴリーの法律によって、定められている連邦予算と連邦構成主体予算の相互関係に関する原則は、以下の4点に整理することができる。

 

ア 各級予算の「独立性」と「統一性」

 

各級(連邦、連邦構成主体、地方自治体)の予算は独立に編成、可決、執行される。後に触れる特別な場合を除いては、予算の決定に当たって「上級」の承認は必要としない。この独立性を担保するために、各級の予算は独自の財源を保障されている。連邦構成主体の予算についていえば、a)固定財源(構成主体が独自に徴収する税種や個々の税種に関する連邦法で構成主体の取り分が定められている税種による税収などを財源とする)、b)調整財源(毎年の連邦予算法などで構成主体への配分額が特定される財源)が、独自財源に相当する。

しかし、「上級」の予算には「下級」予算に対する財政支援基金が計上されるので、実際には、「上級」予算案が決定しなければ、「下級」予算案を編成することは難しい。

 

イ 各級予算間の「相互責任」の原則

 

各級の予算は、その編成や執行の過程で他のレベルの予算の利益を侵害してはならないと規定されている。たとえば、連邦予算の編成や執行の過程で、構成主体が徴収すべき税収が連邦予算に繰り込まれてしまうといった事態が生じた場合、連邦財政は構成主体の財政に対し、相当する額を補填する義務を負う。また、上級の予算が編成され、決定される過程で、下級の予算が負担すべき歳出の最小限度額が決定する。この額(最小予算)を下回らない予算を編成することを下級の財政は義務づけられる。しかし、最小予算の編成に必要な歳入を下級の財政が固定財源によっては賄えない場合、上級の予算には、それを補填する移転資金(下級予算にとっては調整財源または各種の交付金、補助金など)の支出が盛り込まれねばならない。

 

 

 

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