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第6章 ロシア連邦における地方財政制度

 

1 地方財政制度の法的基盤

 

ロシア連邦における地方財政制度を根拠づける法体系は、次の5つに大別することができる。

1) 政府間財政関係を含む財政制度の基本を定める連邦法

2) 地方(ロシア連邦を構成する「構成主体」)の財政権限を定める連邦法

3) 構成主体の下部に位置づけられる地方自治体の権限に関する連邦法

4) 税制度に関する基本法および個別の税種について定めた法律を含む連邦税法

5) 毎年度の予算を定める各レベル(連邦、構成主体、地方自治体)での予算法

この他に、大統領令、政府決定、財務省をはじめとする各省庁の通達など、地方財政の運用に影響を及ぼす法的文書は多数存在するが、基本的には上記の5つのカテゴリーの法律(連邦法および構成主体の法律を含む)によって、地方財政制度のフレームワークが与えられている。

 

(1) 政府間財政関係を含む財政制度の基本を定める連邦法

 

もっとも主要な連邦法は、1991年10月(ソ連邦崩壊前)に施行された「ロシア共和国における予算組織と予算過程の基礎について」(以下、「予算基本法」と略称する)である。なお、この法律は1994年11月に、ソ連崩壊に伴う修正を加えられ、現在まで効力を有している。予算基本法は、連邦予算の編成、可決、執行に関する原則を定めているが、同時に、各級の予算(連邦、連邦構成主体、地方自治体)の相互関係の原則に関する規定も含んでいる。

「予算基本法」と並んで、1992年7月に施行された「ロシア連邦を構成する共和国、地方、州、自治州、自治管区、モスクワ市、サンクトペテルブルグ市への交付金について」は、連邦予算から連邦構成主体予算への資金の移転に関する原則を定めた法律として重要である。ただし、後に触れるように、過去数年間の間に、資金の移転方法や移転額の決定方法については、大きな変化が生じている。そして、こうした変化は必ずしも根拠となる法律の改正や新たな法律の成立によらない場合が少なくない。

「予算基本法」では、一般会計予算のほかに、「予算外基金」と呼ばれる特別会計を設置することが認められている。予算外基金のうち、「年金基金」「社会保険基金」「雇用基金」「義務的医療保険基金」などの社会基金は、連邦、連邦構成主体、地方自治体の各レベルに設置され、各レベルの基金間の資金移転は、一般会計予算内基金とは独立に行われている。

 

 

 

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