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第3章 ブルガリア共和国の地方制度

 

1 概観

 

(1) 地理的特徴・面積・人口

 

ブルガリア共和国は、ヨーロッパとアジアの結節点あたるバルカン半島に位置し、面積約111,012平方キロメートル、人口およそ839万人、1平方キロメートルあたりの人口密度は、75.5人である(いずれも1995年末)。周囲は北はルーマニア、西はユーゴスラヴィア(いわゆる新ユーゴ)、マケドニア、南はギリシア、トルコの5か国に囲まれている。地理的には北部地域はルーマニアとの国境をなすドナウ川が流れ、その南側、国土の中央部を東西にバルカン山脈が走っている。バルカン山脈からはいくつもの河川が北に向かって流れ、ドナウ川に注いでいる。バルカン山脈の南側にはスレドナ・ゴラ出脈がやはり東西に連なっているが、この両山脈の間にはヨーグルトとならんでブルガリアの名産として知られる香水の原料、バラのエッセンスの産地(通称バラの谷)もある。スレドナ・ゴラ山脈を越えて、さらにその南側に目を移せば、エーゲ海へと注ぐマリツァ川に沿ってトラキア平原が広がっている。南部にはピリン山脈、リラ山脈、ロドピ山脈が連なり、国土の東は黒海に面している。

首都ソフィアはユーゴスラヴィア国境に近い西部に位置し、人口約119万人を数える。人口30万人以上の都市は、首都を除けば、トラキア平原の中央に位置しブルガリア南部の中心都市であるプロヴディフ、黒海に面し港湾都市でもあるヴァルナの2都市のみである。さらに、ドナウ川越しにルーマニアを見ることができる国境都市ルセ、黒海に面しトルコ国境にも近い港湾工業都市ブルガスなどがある。こうした都市は歴史的にも、それぞれの地域の経済、文化、そして政治の中心地となってきたが、今日においてもその役割を果たしている。

 

(2) 宗教・母語・少数民族

 

ブルガリアの国勢調査においては宗教、母語、民族的帰属意識を問う項目が立てられている。こうした項目の調査結果をどれほど実勢を表したものとして受け入れることができるかについては議論のあるところだが、一定の傾向を表すものとして評価することはできるだろう。1992年に実施された国勢調査の結果(この時点での全人口は約849万人だったが)、ブルガリア人としての民族的帰属意識をもつと申告した人は全人口の約8割、トルコ人としての民族的帰属意識をもつと申告した人は約1割、他にロマ(ジプシー)と申告した人は30万人を越えた。他にもさまざまなエスニックグループの存在が確認されたことはいうまでもないが、ここでは、特徴的なことを2点指摘したい。

 

 

 

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