(5) 市と区が抱える問題点
市の抱える問題としては、清掃、耐震建設、貯水、住宅建設、高速道路建設、環境保全の問題が深刻であると言われる。なかでも住宅はおよそ6万戸が不足しているが、毎年2〜3千戸しか供給できないでいるという。また共産時代に建てられた建築の耐震度が弱く極めて危険であるが、住宅建設と並んでいずれも費用がかさむため、容易に解決できないとのことである(26)。
区が抱える問題としては、まず区の抱える人口過多が指摘された。例えば第3区は41万2千人であり、できれば20万人まで縮小したいが、現実的には無理であると言う。また、法律上は市と区の間には上下関係はないが、区は予算上市に従属しているので、市に依存せざるを得ないのが現状であるという。この点に関連して、ブカレスト市の超中央集権的性格が最大の問題であると指摘された(27)。
7 カルパチア・ユーロリージョン
(1) 結成の経緯
1990年から91年にかけて、ハンガリー、ポーランド、ウクライナが中心となって、ドナウ川―ムレシュ川―ティナ川流域を中心とするユーロリージョン構想が持ち上がり、1993年2月にハンガリーの5県、スロヴァキアの2県、ポーランドの3県、ウクライナの3県(後に4県)からなるカルパチア・ユーロリージョンが形成された。当時のルーマニア政府は同構想に消極的で、ルーマニアも招待されたが政府が許可しなかったため、ルーマニアからはムレシュ県の国民自由党'93系の県会議員がオブザーヴァーとして参加をしたにすぎなかった。カルパチア・ユーロリージョン発展基金が設置され、本部をニューヨークに置き、代表部がプラハにある東西研究所が同基金を支援することになった。1996年11月の選挙で政権が交代し、新政権が近隣諸国との関係改善に乗り出したことから、ルーマニアも正式なメンバーとしてカルパチア・ユーロリージョンに加盟することになり、サトゥマーレ、マラムレシュ、サラジュ、ビホール、ボトシャニの5県が参力日を表明した。
その他にも、1997年には、ハンガリー、ルーマニア、ユーゴスラヴィアからなるユーロリージョン、ルーマニア、モルドヴァ、ウクライナからなるユーロリージョンも結成された。
(2) 組織構造
カルパチア・ユーロリージョンの組織構造は、評議会、書記局、活動委員会で構成される。評議会は各国各々3人の代表からなるため、総勢15名で構成され、そのなかから1名の議長が選出される。ちなみにルーマニアからは、サトゥマーレ、マラムレシュ、ボトシャンからそれぞれ1名の代表が参加する。議長の任期は2年である。評議会は年4回開催され、カルパチア・ユーロリージョンが抱える諸問題について討議される。