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(3) 諸機関の関係

 

ア 基礎自治体における議会と首長の関係

 

基礎自治体における議会と首長は、双方ともほとんど同じ位に広範な権限が与えられている。しかし、権限のおよぶ範囲がほとんど同じであっても、両機関には、審議機関及び議決機関と執行機関という根本的な性格の違いがある。首長は地方行政について、地域共同体及び議会に対して責任を負い(地行法改正案第66条第2項)、議会の決定を実施する機関なのである。ただし、議会の決定が違法であると判断したときは、首長は県知事に知らせるとあり(同法改正案第68条第1項b)、議会決定に無条件に従属することへの例外的道も設けられている。

また、議会あるいは首長のどちらかに、イニシアティブの権利が与えられている場合もある。例えば、住民投票に関してイニシアティブをとるのは、首長である(同法改正案第68条第1項c)。

議会と首長との関係では、まず首長が議会の開催を要請できるのに対し(同改正案第40条第2項)、議会は首長に対して、その活動に関する情報を議会に提供するよう求めることができる。その場合、首長は書記や専門機関を通じて、20日以内に情報を議会に提供しなければならない(同改正案第52条第2項)。

また、議会が機能不全を起こした際、重要な役割を果たすのも首長である。地方議会が3か月に一度も召集されないか、1つの決定も採択しない場合、また議員の数が定員の半数を割り、それを補欠で埋めることができない場合、首長は、首長が不在の場合は書記が、県知事にその旨を報告する(同改正案第58条第1項及び第2項)。その結果、議会を解散し新しい選挙が実施されることになれば、新議会が成立するまで、首長が、あるいは首長が不在の場合は、書記が当該地方自治体の諸問題の解決にあたる(同改正案第57条第5項)。

さらに、何らかの原因により議員が解任される場合、そのイニシアティブをとるのも首長である。現政府草案によれば、議員の任期の終了は、首長のイニシアティブに基づいて、議会の決定を通じて行われるとある(同改正案第60条第2項)。とはいえ、議会が最終判断を下すことになっており、ここに執行機関の独走に歯止めがかけられている。

 

イ 基礎自治体の議会と県議会の関係

 

地行法改正案第7条第1項は、法律によって定められた権限は市民に最も身近な公共機関が行使すると規定して、基礎自治体レベルの自治を重視する姿勢を明確にしている。同規定は、基礎自治体議会は、その他の自治体ないし中央機関の権限に指定されていない、地方の利益に関わるすべての問題に関して決定権を持つとの同改正案第38条第1項の規定によって、一層具体化される。これら基礎自治体に与えられた権限が、県や国の機関によって制限を受けないよう、法的な保証もされている(同法改正案5条第1項)。また、そのために必要な財政上の措置も保証され、地方自治体は各々歳入及び歳出に関する予算を作成しそれを承認でき、地方税も徴収できるとされ(同法改正案第25条)、しかも財政は地方自治原則に則って管理されるとある(同法改正案第10条)。

 

 

 

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