体制移行諸国における地方自治体の財政能力は、規模の問題と運動し、一般に高くない。自主財源の比率は、最も低いウクライナの3%から最も高いポーランドの40%となっているが、ポーランドを例外とすれば、10%から20%の範囲にあることから判るとおり、地方自治体の財政基盤は、中央政府からの移転に大きく依存している。自主財源をほとんど持ち合わせていないといえるだろう。しかし、多くの国の首都自治体に加え、ポーランドの自治体は、体制移行諸国の中では比較的豊かな状況にある。これは、あくまでも相対的な評価であり、現実には、中央からの補助金によって、地域における最低限の行政サービスの確保がなされていることが多い。いうまでもなく、その割合が多いほど、地方自治の範囲は狭くなる。
(5) 公務員制度
財政に続き重要となるのが、公務員であることは、体制移行諸国においても同様である。しかも、それぞれの国では、公務員法を制定し、その上で、質の高い専門家を育てると同時に、政治的に中立な公務員を育成することに対する関心は高い。これは、行政サービスを効率的に提供していく上でも重要であることはもちろんであるが、それにも増して、旧体制下の巨大かつ非能率で汚職に走る官僚機構を目の当たりにしてきたことへの反省のあらわれでもある。
ロシアの場合には連邦制であるため、連邦構成主体ごとの関連法規と自治体憲章に委ねられている。ポーランドにおいては、法律によって、公選職である議員を除けば、議会の議決を経て雇用される者(幹部職員)、任命職(中間管理職)、契約職(一般職と現業職)の3種に分けられている。いずれも、専門的な資格や公法上の資格がある者に限定されている。ハンガリーでは、助役クラスであれば博士号が前提条件というように、職員採用資格が、それぞれ職ごとに明確に定められている。このように、採用方法や応募資格など、その形態はさまざまであるが、各国ともひととおり、自治体の権利として、公務員制度に位置づけられているか、あるいはそうした制度を整備しつつある。
4 体制移行諸国における制度改革の特徴
さて、地方制度一般について、国家形成の観点から論じてきたが、それでは本調査研究で対象としている旧ソ連及び東欧の体制移行諸国の地方制度改革における特徴はいかなるものであろうか。もちろん、本調査研究が対象とした6か国から得られた点について、若干述べておくことにしたい。