序 調研究の概要
体制移行諸国における地方制度に関する調査研究も、今年度で3年度目となった。初年度である平成8年度は、社会主義体制から自由主義体制への体制移行をとげたいわゆる旧東側諸国のなかから、その代表格であるロシア連邦と、東欧のポーランドを取り上げ、両国の地方制度や地方自治についての調査及び研究を行った。2年度目の平成9年度は、引き続きロシア連邦を取り上げたほか、中欧のハンガリーと、旧ソ連から独立したウクライナを取り上げた。そして、最終年度にあたる今年度は、引き続いてロシア連邦を取り上げたほか、新たに、バルカン諸国のうちからルーマニア、ブルガリアを取り上げた。以下、この一連の調査研究の目的、意義、視座、方法などについて、述べておきたい。
1 調査研究の目的
世界の政治・経済に与えるわが国の影響の増大に伴って、わが国に対する世界の国々からの期待と関心は、ますます高まってきている。国際社会の一員として、わが国が、経済的、政治的、社会的に、その力に見合った役割を積極的に果たしていくことが、求められている。
こうしたなか、地方公共団体が地域的な特性を生かし、あるいはそのもつ行政管理技術などのさまざまな専門的知識などを活用して、発展途上国などへの協力・支援活動を行うことに対しても、ニーズが高まりつつある。なかでも、旧ソ連、東欧を中心とする体制移行諸国に対していかに貢献していくかは、今日、重要な課題となっている。
この課題に対処していく上で、それらの国の地方行財政制度などの実態を把握することは、必要不可欠であり、本調査研究は、東欧及びロシア連邦の体制移行後の新たな地方行財政制度及び国の地方行政とその実態の両面から地方制度を捉え、国際交流はもとより国際協力等における基幹的資料として、取りまとめることを目的としている。
2 調査研究の意義
東欧及びロシア連邦の体制移行後の新たな地方制度とその実態を調査研究することの意義としては、これまで2年間の調査研究報告書でも述べてきたように、以下の3つが挙げられよう。
第1に、前述したように、国ないし地方公共団体が国際貢献を行う際に必要な、相手国に関する基礎的な情報が収集できるという点が、まず挙げられる。体制移行諸国は現在、数多くの課題に直面し、それらを解決しつつ民主化を定着させていくための多くの援助を必要としており、我が国をはじめとする先進各国や国際機関が応分の役割を果たすことが、必要とされている。