KILAモデルの結果と意味するもの
炭素税を課した場合、まず気になるのが県内総生産への影響である。本シミュレーションによれば炭素税の影響は、県内総生産の2〜5%ダウンとなってあらわれる。しかし炭素税収を県内の公共投資に支出すれば県内の有効需要はさほど落ちず、このため県内総生産の影響は軽微と考えられる。
神奈川県の炭素排出はどうなるであろうか。1トン当たり30,000円の課税を行っても、2000年には1990年に較べて30%弱の増加になってしまう。その後二酸化炭素排出量は減少しないから、結局2010年で1990年水準に排出量を押さえるのは困難であるということになる。2010年に二酸化炭素排出量を1990年水準に押さえるためには、炭素1トン当たり70,000円の課税が必要になると見込まれる。
興味深いことに、神奈川県一県が炭素税を導入したケースと、他の県と共同で導入したケースとであまり差がないということである。この大きな理由は、神奈川県に移輸人された炭素は、その多くが製品となって神奈川県から移出されるということにある。本シミュレーションでは、神奈川県に移入された段階で化石燃料に課税がなされ、燃焼されないで製品となって移出される炭素には税の還付がなされないとしている。ちなみに神奈川県に移入される炭素量は、1990年で年間4,950万トンであるのに対し、神奈川県で排出される炭素量は年間1,827万トンである。約3,100万トンの炭素は製品となって神奈川県を通り抜けるだけである。この3,100万トンという数字は、1990年段階での日本全国の二酸化炭素排出量31,800万トンの約1割に相当する。
炭素税をかけた場合の県内国民生産に対する影響と、炭素排出削減量の推移の代表的な結果(ケース1-2-1および1-2-2)を以下に示しておく。