第7章 温暖化防止と地域環境対策
調査研究委員会 委員
細田 衛士
1 はじめに
色々な街を歩くと面白い経験をする。たとえば都バスに乗ると、信号待ちのバスはアイドリングストップする。このため一瞬バスの中が静かになる。振動も騒音も一瞬止まるのに慣れていないと、その静けさに戸惑ってしまう。アイドリングストップはエネルギー節約、そして二酸化炭素排出抑制の観点から、都によって導入されたものであろう。1台1台の効果は小さいかも知れないが、東京都に走っているすべての自動車がアイドリングストップを行えば、積み上げた効果は無視できないものになる。
そのようなことを考えながら地方都市を歩くと、逆のことが起こっているのでまた当惑してしまう。筆者が環境調査の仕事で宮崎県の小さな街を訪れたときのことである。昼食時、町外れの小さな食堂に入った。するとすぐ後からトラックが駐車場に入ってきた。見ていると、運転手はエンジンを切らないまま、すなわちアイドリング状態のまま食堂に入って昼食をとったのである。同じようなことを長野県のある街でも目撃した。また筆者の自宅近くの横浜郊外の国道沿いでもこうしたことが頻繁に見られる。
ガソリンや軽油の価格がこれほど安いと、個人的に燃料を節約しようとする動機付けは小さいのかもしれない。もし自動車を保有している大半の人々がこうした態度をとっているとすると日本国中で積み上げた場合、膨大なエネルギーの浪費をしているに違いない。無駄なアイドリングによる二酸化炭素の排出もばかにはできないだろう。
気候変動枠組条約第8回締約国会議(COP3京都会議)であれほどマスコミが地球温暖化問題を取り上げ、あれほど日本のNGOが活躍したにもかかわらず、日常レベルでは二酸化炭素の排出抑制努力は浸透していないと言って良いだろう。2つの石油ショック(1973年1978-9年)の時の対応とは見事な違いを示している。
本稿では、環境政策、とりわけ二酸化炭素排出抑制で国の政策とならんで自治体の施策が重要であることを示す。