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(参考資料2-3)

 

福岡県

 

21世紀に向けて.福祉や環境の整った町づくりを模索

福岡県では、県の職員がまだ個人的レベルではあるが、住民とともに「21世紀に向けて住民・行政・企業間のパートナーシップによる新しい県行政への模索」を試みている。そのために「福岡県グラウンドワークトラスト研究会設立準備会」を発足させ、3者で話し合う場を積極的に設けながら、地域問題を解決しようと活動中だ。しかも将来を志向し、21世紀に起こりうるであろう問題を提起しての地域づくりを考え始めている。

福岡県のグラウンドワークの特徴は、21世紀の地域づくりの問題として、環境問題だけでなく、高齢化社会の到来はまぬがれないと福祉社会づくりにも手がけている点だ。95年現在、こうした試みも5年に及び、着々と定着しつつある。

「福岡県グラウンドワークトラスト研究会設立準備会」では、話し合いの場を、ワークショップという手法によってつくる試みを行う。ワークショップとは、自主的な研究集会。ワークショップにおいて、住民自らがフィールドワークや話し合いを行い、地域の問題を顕在化させていくのである。

こうしたワークショップを経て、いくつかの活動が実施されつつある。宮田町如来田地区では、開発で沢の水が枯れたために住みかを失ったサンショウウオをもらいうけ、放流を続けるとともに、里山の保水力を高めるために事業林の沢づたいに照葉樹を植えている。また、サンショウウオの観察が容易にできるように自然観察道を整備し、子どもたちによる水辺の植物や水中の昆虫などの観察会を催すなど、親子が自然に親しむ機会を設けた。この活動には、住民、企業が協力できる範囲で参加している。そのほか、北九州市では、蛍の里をつくるなど自然保護の活動もさかんだ。

また、県内に花の苗や種を配って、「しあわせとおもいやり」のタネをまき、種まきから花が咲く過程で誰もが豊かさを味わえる地域をつくる活動などユニークなコンセプトを持つ活動もある。宗像市では、高齢者、障害者の移動を体験しようと車いすに乗って町を歩き、まちづくりを検討するなどの試みも行われ始めている。

福岡県教育委員会の大谷妙人さんは語る。「人類は環境破壊を引き起こしましたが、20世紀末、住民・企業・行政がお互いの役目役割を自覚する中で、パートナーシップによる地域づくりをめざしたことで、環境破壊を最小限にとめ、環境を維持できたと子孫に語りつげたらいいなと思っています。

 

特長

 

県市町村職員、住民、企業及び専門家が地域づくりのため、ワークショップの手法などを駆使して、高齢化社会、環境保全及び改善など、21世紀を見据えた地域づくりを考える。

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自然観察道をつくる作業風景。

 

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サンショウウオとその卵。

 

静岡県三島市

 

12の住民活動が結集した「グラウンドワーク三島実行委員会」

静岡県三島市は、日本において、最も組織的にグラウンドワーク活動が行われているところだ。環境改善をめざし、住民・行政・企業のパートナーシップをとろうと、住民グループたちが集まり、行政や企業に働きかけているのである。

三島市は、富士山からの湧水と箱根西麓の豊かな自然、宿場町の古い町並みの町。1992年、市内12の団体が集まり、「水の郷・三島」を再生・復活しようと「グラウンドワーク三島実行委員会」を結成した。住民団体の中には「三島ゆうすい会」「三島ホタルの会」「建築文化研究会」「三島青年会議所」などがあり、具体的な環境改善活動を行っている。いままで、個別に行ってきた地域づくりに対し、企業や行政に協力を求めての規模の大きい活動を行えるようになった。

現在、三島市では、住民・行政・企業の協力関係が目に見える形になったことで、お互いの信頼関係が生まれ、町づくりの自信につながっているという。市内には「グラウンドワーク三島実行委員会」の発足による活動の成果がいくつも見られる。

その一つ、休耕水田を利用した「花とホタルの里づくり」は、市街地に隣接した休耕水田約1000m2を農家から借用し、市の補助金を受けて、800人以上の市民が参加しての整備事業である。自らがスコップを持ち、汗を流してつくった公園には愛着がわくという。ここは人々の交流の場となり、自主的に管理が行われている。そのほか、市内を流れる水路の周辺も整備され、いくつかいこいの場が設けられ、住民自らの手による住み良い町ができあがりつつある。

「グラウンドワーク三島実行委員会」では将来的に、グラウンドワーク活動が理想とするところの、住民・行政・企業の3者の三角形の中心に存在する「第二の公共機関」ともいうべき組織づくりをめざしている。3者の中心に位置する組織ができることによって、それぞれが抱える問題点を集約し、解決への調整作業を担うことができ、さらに、より良い活動を持続させることができるのである。

 

特長

 

住民団体が水辺の自然環境の再生・復活をめざし、「グラウンドワーク三島実行委員会」として結集。住民が主体的・内発的に動き、行政や企業との協力が可能に。

 

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800人の市民が参加して、「花とホタルの里」をつくりあげた。

 

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水路を整備してつくられたいこいの場。散歩や水遊びの場として利用されている。

 

 

 

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