(7) その他
その他、地方自治体としてすぐにでも取り組むことのできる施策として、以下のようなものが考えられる。ここでは、包括的・体系的に多様な施策を包含するものではなく、現時点で想定し得る内容を列記した。
○ 既に国等で行われている省エネ・システム導入への補助制度の地方レベルでの拡充
○ 行政本体の事務事業にかかる省エネ努力の推進
(リサイクルへの参加、省エネ車両購入の促進、公務員の公共交通通勤奨励など)
○ 地域特性を踏まえた、消費者が自ら選ぶことのできるような省エネ・省資源手法や関連情報の提供
(北海道と沖縄では住宅の省エネ対策も大きく異なる、など)
(8) 最後に
地球温暖化防止は、人類全体にとって避けることのできない、極めて重要な課題である。しかし、それへの対応は、各国の国民、あるいは市民の安全で快適な暮らしや、安定的な雇用を維持しながら進められるべきであり、単純に時計の針を元に戻したり、あるがままの自然環境に回帰することを求めるべきでなないと考える。
現在、EU始め先進諸国、そして途上国においても、この人類にとって不可避の未曾有の危機への対応にあたっても、常に自国民の利益や自国の持続的な発展を視野において、その戦略を練っていると見られる。
例えば、EUにおいては、今後ISO14000を取得した「環境にやさしい企業」の製品でなけれが販売できない、あるいはそれ以外の製品に高い関税(環境税)を課すという議論がなされている。
これは、単に地球環境のために厳しい基準を守るのだけではなく、むしろ厳しい基準を他国に先んじて設けることにより、環境保全よりも経済発展を優先させるような途上国からの安い製品の輸入をストップさせ、自国の製造業の国際的競争力の優位性を維持する、といった高度な政治的戦略を伴うものである。
もちろん、その背景には、1960〜70年代の激しい公害問題を経験して、先進国の製造業は軒並み高い環境水準を既に満たしているという状況を踏まえているのである。典型的な事例で言えば、かつての二度のオイルショックおいて、低燃費・低排出負荷の日本車に市場を席巻された欧米諸国は、新たな環境基準の導入によってそのような「悪夢」が二度と起こらないように予防線を張っていると言っても過言でないだろう。
また、地域レベルにおいても、英国のグラウンドワークのように、環境改善を手段としながら、同時に地域の青少年の非行防止や雇用促進などの課題を解決しようという複合的な戦略が背景にある。
わが国の地方行政においても、人類の共通の課題に取り組む真摯な態度を基本としつつも、こうした高度の戦略性をも兼ね備えることが重要になっているのではないだろうか。