技術的問題として、ほとんどの地方公共団体が、その自治体だけの過去10〜30年間の長期的トレンドを元に将来人口等を予測し、将来計画を策定している。しかもそのトレンド予測に用いる数式は、ほとんどの場合単純線形回帰式かせいぜい指数回帰式であり、これまでの増加傾向にあった時代のデータを出発点にする限り必然的に将来も増えるという形の式を採用しているのが現実である。
より厳密には、多くの地方公共団体では男女別の5歳階級の人口構成(人口ピラミッド)をもとに、女性の合計特殊出生率と社会増減を想定して5年サイクルで繰り返し計算して将来の人口構成を求める「コーホート法」を用いている。これは、基本的には国の人口問題研究所などの公式の人口予測にも用いられる精度の高い手法である。
しかし、女性の出産数はともかく、社会増減(他市町村との人口の流出入)についてはその地方公共団体の過去10〜30年程度の国勢調査、あるいは住民基本台帳による人口の増減の趨勢を将来に延長しているに過ぎず、急激な少子化の傾向を十分に読み込んでいるとは言い難いものである。
さらに、女性の出生数にしても、ここ10年以上、常に公式の数値よりも実際の数値の下落の方が低い値を更新し続けており、公式発表の数値(合計特殊出生率)は「現実よりも将来の年金制度の維持や高齢者の福祉システムの維持のために必要な希望的観測の入った大き目の数値」となっているとも言われている。
このことから、純粋に推計する段階から、既に大き目の将来フレームが見積もられているといっても過言ではない。
イ 構造的課題
しかも、戦後長らく全国的な人口増と経済の右肩上がりが続いてきたため、人口や就業者、経済活動の規模などが将来的に増加することがいわば「当たり前」という意識が行政担当者のみならず市民にも広く浸透し、それが、行政自らが停滞もしくは減少に向かうというシナリオを描くことを極めて困難な状況にしてきたと言えよう。