日本財団 図書館


さらに、なぜその中でも「温室効果ガス削減」に焦点があてられているのだろうか。

その背景は、前節でも触れたように、現段階で人類にとって最も重要な資源である化石燃料の消費と国際貿易を巡る各国間の利害の交錯が当面の重要性を持っているためであると見られる。
もちろん、温暖化による環境破壊の懸念はほぼ確実視されており、どちらがより根源的な背景かという点では、「取り返しのつかない環境破壊を回避するため」というのが最も重要であることは論をまたない。

 

ア 温暖化による影響

 

では、現段階で実際の影響ほどの程度と見積もられているのであろうか。

現在、最も確実性の高い、科学的に客観性のある将来予測は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のモデル予測によって行われている。この予測結果は、先に触れたように新しい知見が加わる毎に修正されており、最初に見積もられたセンセーショナルな予測(海面が2〜3メートル上昇するなど)に比べると、だんだんトーン・ダウンしているようである。

最新のIPCCレポートによると、「何も対策を行わなかった場合、全地球の平均気温は21世紀末(およそ100年後)には2度上昇し、温暖化に伴う海水の膨張などに伴う海面上昇は平均でおよそ50センチメートル」と予測されている。

ここで、「全地球平均気温」というのがくせ者である。

地球温暖化による平均気温の上昇というのは、昼と夜の温度差、あるいは夏と冬の温度差よりもはるかに小さな変動幅であり、一見するとあまり大変なことではないようにも見える。また、二酸化炭素などの温室効果ガスによる温暖化は100年単位で見た場合に全地球平均で気温が1〜2度変動する程度の穏やかな変化であるのに対して、こうした化石燃料の消費とは直接関係しないエルニーニョ現象などの短期で地域限定的な気候変化、あるいは数十年単位の短期の変動幅の方が大きいため、年ごとの気温変動に着目していると短期の変動幅の方が目立つことになる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION