(イ) 温暖化防止手法のひとつ
将来、本当に温暖化が進んだ場合に備え、それを防止するあらゆる方策が検討されている。その中のひとつとして、米国の一部の宇宙航空分野の研究者が提案しているのが「成層圏への硫酸ミスト(エアロゾル)の散布」という乱暴な手法である。(このほかにもアルミを蒸着した巨大な「日傘」を人工衛星軌道に打ち上げて日陰をつくるというアイデアもある。)
エアロゾルの日傘効果によって温室効果を相殺しようというアイデアで、その最も大きなメリットは、植林や人口抑制、化石燃料の消費抑制などの他のあらゆる方策よりもコストが安く実行しやすいということである。
しかし、酸性雨の被害増加など、それによって派生する他の環境問題の方が大きくなる恐れや、予想を超えた大きな地球的規模の環境被害を引き起こしかねないため、現実には実行すべきではない、という意見が支配的である。これに対する再反論としては、「過去何回かの大規模な火山爆発で短期的に地球が冷やされることがあっても、これまで地球生態系は復活を遂げてきたので、やり方を加減すれば大丈夫である。何よりもこれから近代化を進める途上国の化石燃料消費を無理やり押さえつける事なく実施できるところにメリットがある。」というものである。
いずれにせよ、いまだ仮説の域を出ないものであるが、常識的には「さらに大きな環境破壊の恐れ」の方が現実味を持っていると考えられる。
2 温室効果ガスの削減にかかる近年の動向
(1) 国際的な取組の枠組み
今日、温暖化防止、とりわけ温室効果ガスの削減について、国連をはじめ様々な場で国際的な取組の枠組みづくりが進んでいる。
数ある地球環境問題の中で、なぜ最も客観性の薄い温暖化対策について国際的な枠組みづくりへの取り組みが多く議論されているのであろうか。