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2 森林によるCO2の吸収について

 

森林の光合成による炭素の取り込み(総生産量)から森林植物自体の呼吸でCO2が大気に戻る(呼吸消費量)を引いたものが、植物体として固定される量(純生産量)である。この純生産量は、現存量増加量と枯死量と被食量に分けられる。

 

(1) 森林の炭素収支

 

十分に発達して動的な平衡に達した森林では、現存量の増加はほとんどなくなり、毎年生産された分が枯れ落ちる。枯死したものは分解してCO2を放出する。成熟した森林では、光合成で取り込むのと同量のCO2が呼吸や枯死物分解により大気に戻され平衡状態を保っている。(1年生の草本群落でも炭素収支は±0に近い)実質的なCO2吸収固定に役立っているのは、未成熟の多年生、永年性植物群である。若齢、壮齢期の森林がCO2固定には重要。

 

(2) 日本の森林についての試算

 

日本の森林面積は2,515万haで、そのうち1,040ha(41%)が人工林。炭素収支が±0のような成熟安定した原生的森林は少ない。森林全体の蓄積量(幹成長量)は1990から1995年で、人工林、天然林合せて年平均約7,000万m3である。この森林が1年間に固定する炭素の量は1,520万トンになる。(現存量増加量に近い値)年間総放出炭素量を33,200万トンとすると、森林はその4.6%を吸収固定していることになる。主要な森林タイプでみると、純生産量の多いのは、常緑広葉樹林とスギ林であり、落葉広葉樹樹林は少ない。ただこれは葉や枝の分解によるCO2発生量は差し引いていない。

 

(3) 伐採量をどう考えるか

 

日本で毎年伐採される木材量は最近の年平均で3,440万m3である。この木材量がすべて炭素貯留されたまま使われるとすると、炭素量で580万トンになる。これを成長量に相当する1,520万トンに加えると、年間総放出炭素量の6.2%になる。

 

 

 

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