第2章 CO2吸収源としての緑の意味
調査研究委員会 委員
輿水 肇
1 吸収源の考え方
京都議定書(Kyoto Protocol)では、森林等を対象としたCO2の吸収源(sink)についての規定が盛り込まれている。Sinkの意味は、気候変動枠組条約第1条第8項で、温室効果ガスを大気環境から取り除く機構と吸収プロセスとしている。したがって、吸収源は、例えば林地というように場所や面積だけを示すものではない。
(1) 議定書の中での吸収源の扱い
基準年においては吸収源による吸収量は基準量の算出には用いない。また目標期間における吸収源の扱いは、新規植林、再植林、森林減少の3つの活動に限定し、2008年〜2012年の炭素ストックを吸収量とみなすとしている。そして吸収源の範囲の拡充については今後検討することとしている。
(2) 主として森林による吸収量の扱い
1990年以降の新規植林、再植林、森林減少に起因する炭素ストック量の目標期間内(2008年〜2012年)の変化を吸収量とする。(1990年以前から2012年まで森林の状態が持続している場所があっても、吸収源の算定には含まれない)これがマイナスになった場合は排出にカウントされる。日本の場合、炭素換算で約100万トンと予測算定されており、この値は、基準年の温室効果ガス総排出量(約3億4千万トン 炭素換算)の約0.3%に相当する。
(3) 吸収源の対象範囲の拡大について
2010年頃の国内すべの森林を対象としてその吸収量を推計すると、約1200万トン(炭素換算)となり、これは温室効果ガスの総排出量の約3.7%に相当する。6%削減目標の達成を容易にするためには、吸収源の追加に期待するという考え方がでてくる。日本は、科学的に不確実であるとの理由から、吸収源による吸収量を数値目標や数値目標の達成の評価には用いないとする立場をとっていた。