3 CO2削減策と我が国の政策の特徴
交通分野でのエネルギー消費量を減らし、CO2発生量を削減するための対策として、どのような対策を取り上げるかは、CO2削減が交通分野で課題として議論され始めてから日も浅いこともあり、国や研究者により若干の違いが見られるが、その大枠は、以下のように整理することができる。
まず、交通分野でのCO2削減策は、交通と関連する土地利用分野での対策と、直接的に交通分野を対象とした対策に分けられる。後者は、さらに社会資本の整備を用いた対策、技術開発を用いた対策、法的規制を用いた対策、経済的インセンティブを用いた対策、協定等の民間の自主的活動を用いた対策、知識の普及や教育を用いた対策に分類される。
この分類の枠組みを用いて、現在までにCO2削減を目的として実施、あるいは実施が提案されている具体的対策を整理したものが、図表3-1である。図表3-1には、各対策を実施する場合、国レベルで実施することが必要であるのか、地方(都市)レベルでも実施できるのかを示してある。これを見ると、技術開発を用いた対策、法的規制を用いた対策は国レベルで、社会資本の整備による対策、経済的インセンティブを用いた対策、知識の普及や教育を用いた対策は国レベルと地方レベルが協調して、そして土地利用分野での対策と協定等の民間の自主的活動を用いた対策は地方レベルで、それぞれ実施が期待される対策であることが分かる。
一方、我が国は既に国が中心となって実施するCO2削減策を一昨年末に開催された京都会議のために整理し、公表している。(7)公表されているCO2削減策を前述の枠組みに沿って整理して見ると、次のようになる。社会資本の整備を用いた対策では、道路の改良、鉄道の新設と改良、物流拠点の整備、交差点の改良等の具体策を実施し、年間約280万トンのCO2削減を実現するとしている。技術開発を用いた対策では、高効率自動車の開発、代替燃料車の開発等の具体策を実施し、年間約60万トンのCO2削減を実現するとしている。法的規制を用いた対策では、燃費規制、信号規制等の具体策の実施により、年間約380万トンのCO2削減を実現するとしている。
協定等の民間の自主的活動を用いた対策では、共同輸送、貨物車の大型化、TDM、テレワーク等の具体策の実施により、年間約310万トンのCO2削減を実現するとしている。
知識の普及や教育を用いた対策では、徒歩や自転車の利用推進、環境にやさしい運転の普及、自動車の利用自粛等の具体策の実施により、年間約140万トンのCO2削減を実現するとしている。
このように現在、我が国で国が中心となり実施しているCO2削減策は、地方レベルでの実施が可能な土地利用分野での対策、及び経済的インセンティブを用いた対策が、全く対策として考慮されていないことが大きな特徴と言える。また、地方レベルで実施可能な協定等の民間の自主的活動を用いた対策に、国レベルで実施が必要な法的規制を用いた対策に次いで、大きなCO2削減効果が期待されていることも特徴と言えよう。