おわりに
新世紀に向けて、内外ともに大きな変革期を迎えつつある中で、国においては行政改革、経済構造改革などの取組みがなされており、国と地方との関係については地方分権という改革が実行の段階に入っている。もっとも、地方分権の本旨である個性豊かで活力ある地域社会づくりを実現するためには、これまでの中央と地方との関係を変えるだけでなく、地方公共団体自身が自らのシステムを見直し、構造改革に主体的に取り組まねばならない。
その際には、これまで本調査研究で見てきたとおり、例えば、地方行政分野の三層構造(国・都道府県・市町村)を絶対的なものとして考えるのではなく、既成の概念に捉われることのない柔軟な発想に基づく議論や検討も有益であると考える。地方における行政改革においても、緊縮財政下の自発的な動きとして、人件費削減などの従来は見られなかった取組が新聞を賑わせている。今年度は地方公共団体の財政危機がマスコミに騒がれたが、高度経済成長による税収増が望めないことなどから、一定の予算や人員の制約の下で、介護保険や環境問題などの多様化・高度化する課題に知恵を絞って取り組まなければならないという地方公共団体の置かれる厳しい状況は今後も変わらないものと考える。
しかしながら、厳しい状況の下であっても、本調査研究会で現地調査に臨んだ三重県のように各地方公共団体において斬新な試みがなされており、最近では、神奈川県のように、交番のリースバック方式をはじめ、わが国独自のPFI的手法を活用する動きもある。その是非について現時点での評価が難しいものもあるが、地方公共団体が創意工夫を働かせる動きに関しては、今後の動向が大いに期待されるものである。
国においても、本通常国会では、地方分権推進関連法律案に市町村合併について特例も盛り込まれる形での提出が予定されているなど、現行法制度を見直す動きが盛んである。NPO法は、昨年12月に施行されて、本調査研究において検討を行ったコミュニティ論や宮・民の役割分担論の今後の議論に影響を与えることが予想されるが、介護保険法についても導入が近づくにつれて関心が高まり、家族介護に対する給付の適否などの議論を呼んでおり、今後の動向が注目される状況にある。
いずれにせよ、少子高齢化社会などの新たな課題に的確に対応し、国民が豊かさとゆとりを実感できる社会を実現していく上で、地域の総合的な行政主体である地方公共団体の役割は重要になる一方であることは疑う余地がない。地方分権、行政改革、地方税財源の充実強化など行政課題は山積しており、今後とも、各界で議論が盛り上がることを期待するものである。