5. 成果の活用等
本研究の波浪/性能/構造分野で得られた基礎技術の成果は設計・運航・保守のそれぞれの分野で単独の技術として活用できる。
しかしながら「高度モニタリング」として成果を活用していく為には社会基盤・技術基盤としてまだまだ解決しなければならない課題が多くある。
例えば社会基盤面ではこうした「高度モニタリング」の必要性をどこまで認識し、仕組みの中に組み込むかということがある。IMO/SOLAS/IMSコードの採択と発効は船舶の安全運航を船上の責任だけでなく陸の船舶運航管理会社も含めた管理システムとして備えその履行責任を求めたものであるが、本研究の「高度モニタリング」はその一助となる技術であると言える。
本研究の「再高度モニタリング」はデジタルデータベースの衛星による船陸通信を前提としたコンセプトである。まだまだ通信費が高価であるといった現状もあるが衛星通信技術の発展/商用化は目覚ましいものがあり安価で高速な通信は夢ではない。「高度モニタリング」の実現を加速しうる技術基盤と考えられる。
モニタリングは「安全性確保/スケジュール維持/性能把握/保守管理」等の目的で様々の分野で広範囲に行われるようになってきた。船舶分野では機関関係は別として荷役・航海中の状態を船体分野で総合的にモニターしようというものはまだ無い。本研究の「高度モニタリング」の成果が船舶分野のモニタリング定着化に寄与することを期待する。
本研究は3年間ということから基礎研究と位置づけ「高度モニタリング」の骨格構築とそれを構成する主要技術開発に研究の主眼を置いたが実用という面ではまだまだ解決すべき多くの課題がある。海運・造船関係者がこうした技術を基盤として今後とも実用化に向けて取り組んでいかれることを期待する。
6. 最後に
本研究の内容が波浪/性能/構造の広範囲な技術分野に亘ること、また本研究が船の設計から運航・保守に至るまでのトータルライフを対象とすることから研究には海運・造船の産官学の関係各位の参加を頂いた。またフィールドテストの実施にあたっては船主および本船関係各位の協力を頂いた。
最後に多くの研究成果が得られたことに鑑み関係の皆様に厚くお礼申し上げます。