1. 研究の目的
自由降下式救命艇システムは、船舶海難時に予測される船体挙動や海象・気象条件の下で、本船の船尾部分に設置した進水降下台上から海面に自由滑走させて、乗員の避難・脱出を容易且つ短時間に実施できるものとして、欧州で開発されたものである。
しかしながら、一部の既存製品をみるかぎり、自由落下時の衝撃による艇体及び人体への加速度の低減対策、本船傾斜時における降下システムの信頼性並びに回収方法等の検討は十分であるとは言い難く、これらの面での性能改善に加えて、定量的な設計・解析技術の確立が必要である。
更に、近年、避難・脱出時におけるヒューマンエラーに関連して、船上における保守点検並びに取扱訓練の重要性が再認識されており、定期的な落下訓練を繰り返し実施することによる艇体強度劣化に対する検討・評価も重要課題となってきた。
本研究では、短時間に安全、迅速なる艇の離脱・回収を可能とするシステムを検討する。
なお、最近、横浜国大で開発された2段滑台方式の新型式のシステム☆)の有効性について、実験により確認する。更に、水面衝撃時の艇体及び人体への衝撃値を許容限界度内に抑えるため、艇の形状、座席構造並びに人体保持方法等について新しい形式を研究すると共に、繰り返し衝撃荷重等の過酷な条件下でも十分な強度、信頼性のある構造を検討し、自由降下式救命艇の設計・解析技術の高度化を計ることを目的とする。
★)荒井誠他:自由落下式救命艇の新しい離脱方式について、関西造船協会誌、第229号、1998
2. 研究の目標
研究目標は次のとおり
(1) 新しい救命艇システムの検討
自由降下式救命艇に適した、進水・離脱・回収方法の検討
(2) 救命艇の形状及び構造等の設計・解析技術の高度化
艇体運動シミュレーション法、衝撃力推定法、FEM構造解析
(3) 衝撃緩衝用座席及びシートベルトの効果と人体への衝撃力の評価
(4) 大型模型艇による総合的検証実験
2段滑台方式の有効性の確認、艇体の衝撃強度の確認
3. 研究の内容
3.1 救命艇の形状及び構造等の解析手法
(1) 模型実験
a) 小型模型実験
本研究の小型模型実験に用いた模型艇の鳥瞰図を図3.1(1)-1に示す。模型艇は、尖った船首をもつ痩型船型のLifeboat-A、ブラントな船首をもつLifeboat-Bおよび大型模型実験にも用 いた超肥大船型のLifeboat-Cの3艇である。Lifeboat-Aは本232研究部会で試設計された自由落下式救命艇で、船首と船尾を細く絞り、また、定員上ぎりぎりの容積を確保しつつ可能な限り細長い船型としてある。さらに、滑台(skid)上に斜めに設置された状態で乗員が船尾ハッチから搭乗し易いように船尾を斜めに切った極端なトランサムスターンをもっている。