2.3 救命艇の製作技術
過度に荷重を与えた大型模型の水面衝突時に、船尾船底部に大きな撓みが発生し、船殻母材の破損、二次接合の剥離といった艇の破損原因となった。 これに対して、内部構造下の船底部に発砲材を充填した船首船底は、船尾船底部より大きな水圧を受けているにも係わらず、二次接合の剥離にとどまり、船殻母材の破損までには至らなかった。又、内部構造物と艇体側面の二次接合部は、実験を通じてその大小の差はあるものの、常に二次接合の剥離が発生した。
2.4 進水・離脱/回収システム
各種の進水・離脱システム及び回収システム(案)の基本要件を階層分析法により評価し、選ばれたシステムについて試設計等により細部を検討した。また、救助艇兼用の回収システムについての検討を行った。
3. 得られた成果
3.1 設計・解析手法
(1) 艇体運動計算法
数値シミュレーションによって、着水運動や衝撃加速度への船型や落下条件の影響を定量的に評価することが可能となった。船型や落下条件を考慮して空中から水中までの自由落下式救命艇の挙動を理論的に求める手法は国際的にも無く貴重である。
(2) 艇体の衝撃荷重計算法
自由降下式救命艇の衝撃荷重の推定法について検討し、大型模型艇の実験結果と比較した。また構造解析に必要な荷重の分布を与えた。
(3) 艇体の構造解析法
FRP艇の全船一体構造解析のモデル化が可能になった。救命艇の開発において設計時の構造解析により強度の検討が出来るようになることは重要であり、その一例が示された。
3.2 新しい進水方式(二段滑台方式)
本方式は、従来の進水方式の弱点となっていた滑台端部で生ずる拘束落下運動時の船首下げ回転運動を除去することを狙っている。これにより、救命艇は初期の姿勢を保ったまま海面に着水するため、着水後の運動を安定化することができる。この方式は原油タンカー等の喫水変動の大きい母船からの離脱に一般的に有効な方法として開発されたものであり、実験等によって性能を確認することができた。
3.3 進水・離脱・回収システム
概念設計の段階であるが、種々の新規提案により、安全・迅速な回収システムの開発に有効な資料を得た。また、救助艇兼用のシステムにも展開できる可能性が見出せた。
3.4 製作技術
自由落下式救命艇では、水面衝突時に水圧を受ける船底部に発砲浮力材を充填して船殻FRPのパネル剛性を増す事が有効な手段である事が確認された。
また、内部構造物と艇体側面を接着するL型二次接合は、特に剛性の高い構造部材に隣接する箇所を除き、適切な接合方法とはいえないことが確認された。