3.規制緩和後のフェリー事業のあり方
1)航路の再編成
以上述べてきたように、フェリー事業は、現行制度においても他の輸送モードと厳しい競争関係にあるものと考えられるが、フェリー事業者間においては競争制限的な面があることも否定できない。つまり、既存のフェリー航路と競合する橋・道路、鉄道の整備、RoRo船の参入は自由であるが、競合するフェリー航路の新設等は、「需給調整規定」により、既存航路を有する業者との調整がつかなければ、非常に困難な実態となっている。一方で航路の休廃止についても許可制とされており、不採算航路からの撤退についても、利用者利便の観点等から制限がなされている。
フェリー事業において、どの地点とどの地点を航路で結ぶかは経営上極めて重大な事項と思われる。しかしながら、現行制度においては、需要が見込める地域についても、タイムリーに航路を設定することができなかったり、不採算航路についても、撤退・減便が制限的であるため、収支改善が難しかったり、新規航路の開設を躊躇させる場合もあるものと考えられる。
このように、能力のある事業者が、機動的に航路を設定することを妨げられることにより、仮に、現行の航路ネットワークについて必ずしも需給バランスがとれているとは言い難い状況にあれば、今回の規制緩和により、「航路」の参入制限が緩和されるとともに、撤退・輸送力削減が自由になるため、不採算航路からの撤退・抜港、新規需要の見込める地域への航路の新設・寄港地の増加等が期待される。また、試行的な航路の開設や一時的な運休も行いやすくなるのものと考える。
2)航路特性に応じた事業展開
1]事業形態の多様化
規制緩和の直接的な効果ではないが、今後は、事業者の創意工夫を活かし、利用者のニーズにあった様々な形態のフェリー事業の展開が期待される。
フェリー船社に対するヒアリング結果においても、規制緩和後は現在の体制を変えていく必要があるという点では一致している。すでに、フェリー船社の意向、戦略が具体化している事例もあるが、これまでの調査結果に基づき、規制緩和後の中・長距離フェリー事業の形態を想定してみると図8-1のとおりである。