いよう、事業参入時には、需要供給の均衡について審査されることとなっている。(事業に与えられる「免許」は、事業の経営について、独占的地位を与えるものではないが、フェリー事業の場合、その経営には、多額の資本の投下を必要とし、需給調整により新規の参入が制限されることにより、ある程度、一種の独占的性質を帯びることがある。)このように「公企業の特許」の性質を有する免許を必要とする事業については、程度の差はあるにせよ、無秩序な競争を排除し、秩序ある競争が行われることが期待されているものである。
こうした免許に係る事業については、無秩序な競争から保護される一方で、国による種々の規制に服することになる(第3章参照)。運賃においても、利用者の利益の保護という観点のみならず、事業の維持、継続を考慮して規制がなされることとなる。
なお、免許を受けた事業者は、免許制度により、他者からの無秩序な競争から保護されているため、事業の経営が保守的になりがちであることも否定されないと考える。
3)フェリー事業における免許制度の実態
1]需給調整の実態
航空事業のように、他の輸送サービスでは代替できない極めて高速の輸送サービスが提供できる場合は、他の輸送モード(手段)との競争関係はある程度制限される場合もあると考えられるが、フェリー事業の提供するサービスは、一般的に、そのサービス内容(安全性、時間、快適性等)によって他の輸送モードと差別化を図ることが難しく、トラック輸送、鉄道等他のモードによって十分代替され得るものであり、こうした輸送機関と極めて密接な競合関係にあるといえる。しかしながら、フェリー事業の免許制度下における需給調整規定の保護する範囲は、フェリー事業の業界内に限られているため、現行制度においても、フェリー事業は他のモードとの間で市場原理に基づく激しい競争にさらされているということができる。例えば、現行の海上運送法の需給調整規定においても、既存のフェリー航路と同一地点間について、橋・道路の整備、貨物船の「新規参入」を妨げるものとはなっていない。
一方、フェリー事業者間における需給調整規定の運用を見てみると、新しい航路への「新規参入」は競合航路を有する他の事業者との調整に多大な労力を要する状況を作り出しており、フェリー事業における新たな事業展開を妨げている面があることも否定できない。
2]運賃制度の実態
現行海上運送法下においては、フェリー事業の運賃は、総括原価主義に基づく認可事項とされており、利用者の利益の保護及び事業の維持・継続の観点から規制がなされている。(平成6年には、事業の総収入を減少させないと見込まれる範囲で、届出により運賃等の割引ができることとされた。)