<競争の内容>
新規参入は利用客が多く、収益性の高い路線へ集中した。新規参入者の戦略は「乗客が乗りかえたくなる魅力的な運賃」を提示し、それを大々的に宣伝するやり方である。既存業者は防戦のため、参入者の運賃よりも低い運賃を用意して顧客のつなぎとめを図った。こうして始まった運賃競争はどちらかがギブアップするまで続けられた。これは1路線にとどまらず、ほとんどの黒字の路線で発生したから、企業全体としてのコスト競争力を強化しなければ企業が倒れてしまう。
コスト削減はあらゆる分野で実施された。デルタ航空は機内食からキャベツを除くことで、年間140万ドル削減したし、アメリカンでは「二重賃金制(新規採用社員は既存社員の給料の半分)」まで採用している。レイオフもあたり前となった。コンチネンタル航空の経営権を握ったロレンゾ氏は、いったん会社を倒産させ、2日後にもう一度会社を設立して、12,000人いた従業員のうち4,000人だけを再雇用するといった方策をとっている。
アメリカの航空業界のサバイバル競争は、法律スレスレでの参入、撤退、価格競争、合理化、契約破棄、営業妨害、レイオフ、組合つぶし、引きぬき、買収、偽装倒産など、考えられるあらゆる手だてを使って行われた。このような競争の結果、業界は大混乱状態となりパンアメリカン、イースタン、ブラニフといった名門企業ですら倒産してしまった。
<生き残り戦略>
激烈な競争に耐えて生き残った企業は、これまでなかった新しい戦略を開発、導入している。それらは表4-2のとおりである。