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(2)商社、量販店等による海外調達の現状

 

商社、量販店等による海外からの調達手段として、一般的に、逆輸入、開発輸入、直接輸入、日本進出海外メーカーからの調達等がある。

統計データによりどの調達手段が多いかを明確にすることはできないが、後で掲げる近年の国内業者による消費財輸入の事例をみると、開発輸入が急増している状況が明かである。

 

1]逆輸入

円高による国内生産コストの上昇、国際競争力の低下などの理由から、日本企業の外国直接投資が盛んとなり、海外市場向け製品を生産する一方で、日本向けに海外の子会社で生産するものもある。これら日本に輸出される製品を日本からみて「逆輸入」という。

逆輸入の大半は、これまで海外子会社から親会社への販売、すなわち企業内取引である。

最近では、国内における製品在庫の保有コストが割高なことから、海外で生産した製品を発注があるまで現地でストックしたり、発注から消費者への引き渡しに合わせて生産をコントロールするなど、より厳密な行程管理の中で逆輸入が行われている。

 

2]開発輸入

「開発輸入」は委託加工取引の一形態であるが、輸入業者の側から見ると、次のような仕組みをさす。すなわち、低加工賃からの利益を得るために、企業が外国企業にデザイン、仕様等の生産に必要な情報とともに材料、中間財等を提供して生産を委託し、完成品を輸入するというものである。

このような委託生産はデパート、スーパーなどの大規模小売店によって広範に行われており、プライベートブランド商品として店頭で売られている。

開発輸入は低賃金労働を利用するため、労働集約財が最も適し、アパレルなどの繊維製品の比率が高くなっている。

一方で、開発輸入は開発から最終製品までの期間短縮が重視されるとともに、委託先の国における生産コストの上昇に対して的確に対応することが必要である。近年では、こうしたコスト上昇を背景として、アパレルを中心とした開発輸入の相手国が、アジアNIES諸国から、ASEAN諸国へ、さらに最近では中国にシフトしつつある。

 

3]直接輸入

「直接輸入」とは、百貨店等の大規模小売店が商社などの卸売業者を通さず、商品を海外から直接に輸入することを指す。このような輸入チャネルを利用することで卸売マージンを節約できることからく消費者に低価格で商品を提供できる。

 

4]日本進出海外メーカーからの調達

最近では、従来、商社等が輸入し百貨店等で売られていた海外の高級衣料品等のブランド品が日本国内に現地法人を設立し、直接商品を輸入し、店頭で販売するという例が見られるようになった。これは、円高差益等を活かして、海外並の価格で商品を販売することにより、実質的な割安効果を出し、競争力をつけようというねらいがあるものと考えられる。

 

 

 

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