日本財団 図書館


3 家一棟分ふるさとの森づくり

 

(1) 「家一棟分ふるさとの森づくり事業」は、杉の香りのするマイホームを自分の山林でとれる木材で建てよう、というキャッチフレーズで始めた森林の村の交流事業である。津江スギで知られる上津江村の村有林の一部を家一棟分60万円で分譲し、20年後に杉材30m3(住宅100m3)を現物提供するというユニークな事業である。

昭和57年に第一次募集したところ、全国的に反響を呼び、募集に対し11倍の応募があった。第一次(昭和57年)の50名に続き、第二次(58年)52名、第三次(60年)66名と順調で、合計168名がふるさとの森づくり会員となった。地域別内訳は、北海道2、東北1、北陸1、関東32、東海6、近畿5、中国8、四国4、九州111と会員の広がりは全国に及んでいる。タイミング的に、自然志向、本もの志向、住宅ブームが重なったということもあった。

本来の狙いは、県下でも一番人口が少ない村を都市住民との交流で活性化しようというものだったが、その狙いが当たった形となった。地域活性化は人びとの往来(交流)で興るという信念のもと、北海道から鹿児島まで全国168名を会員として集めることが出来た。昭和63年に「山村と都市との交流による地域活性化優良事例」として国土庁長官表彰を受けている。

 

(2) 契約会員とその家族は上津江村の特別村民になってもらい、“ふるさとの森づくり”に参加する。年一回、会員と地元住民との交流会「森のつどい」を開催している。森林の枝打ち、施肥、伐採などの体験作業をしたり、地元住民の手づくり料理を囲んでの交流を行っている。この森のつどいは、平成9年までに12回開催した。20年間という長い期間、会員は村民扱いでさまざまな体験型の催しに参加し、交流を深める。交流を通じて村の活性化を図るとともに、会員の都市住民も森林機能の重要性への認識を深める。

また、この森のつどいに参加できない遠方の会員のために、村から出向いて森の状況を報告する“出前”交流会も開催している。平成2年福岡、同4年東京、同8年名古屋、同9年大阪、同10年広島と開催している。

平成15年には第一次分の引き渡しが行われることになるが、交流会では会員側から「伐採後の跡地には自分たちも参加して次代の森づくりに役立ちたい」という発言もあるなど、都市住民に山村の森林育成の大切さへの認識が確実に深まっている。

 

(3) 平成3年の台風で、分収林の倒木など被害が大きく、これをカバーするため代替林を隣りの中津江村内に購入して確保した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION