日本財団 図書館


C. テーマ:病原菌となる微生物と宿主の反応に関するワークショップ

モデレーター:J.クレーンビュール博士

 

B) ワークショップレポート

診断と疫学の新しい方法

 

議長:T.ギリス博士

 

このワークショップの目的は、ハンセン病の診断や疫学研究の新しい方法や技術を検討し、それらをハンセン病制圧プログラムに取り入れたら、どのような効果や可能性があるかを評価することであった。これらの方法はハンセン病制圧の手段として評価する前に、さらに改良を加え、テストを行う必要があることが、ワークショップを通じて明らかになった。

 

接触による感染の危険性を判断する血清学

家庭内で患者と接触することで、多菌性(MB)ハンセン病を発症する危険性を持つ人を発見するのに、PGL-1を使った血清学が役に立つことが、数年間広い範囲にわたって調査を行った結果、明らかになった。多菌性のハンセン病は、もっとも感染源となりやすいらい菌(M.leprae)の貯蔵庫なので、ワークショップの参加者は、まずこの血清学の応用を研究するべきだと考えた。いまではディップスティックによる15分間のPGL-1抗体検査が可能になり、たとえばLECやSAPELのような小規模のプログラムで、現地で検査ができるようになった。ただし、このテストには限界があり、地域社会で接触感染の有無を調べる集団検査には使えない。MBと指定された患者との「緊密な」接触者にだけ応用できる特殊なテストである。発症の可能性が高く、社会にらい菌(M.leprae)を伝染させる可能性の高い少数の接触者グループについてこのテストを行うのが、経済的にも妥当である。予備調査の結果から、患者の家族でPGL-1が陽性の接触者に、ハンセン病の化学療法を積極的に行うと、PGL-1抗体の滴定量が低くなることがわかったが、ROMを1単位服用するだけではほとんど効果がみられなかった。このように、PGL-1が陽性になった接触者に積極的な予防療法を行うと、社会への感染力をかなり抑えることができそうである。この領域で次のステップは、危険性の高い接触者グループに対する適切な介入措置を定義づけることである。

 

リファンピン耐性の分子テスト

ハンセン病では、薬品に対する受容度のテストを長い間求めてきた。現在私たちには、らい菌(M.leprae)のリファンピンに対する耐性の変化を探るテストがある。このテストはrpoB遺伝子に見られるDNAのシークェンスに基づいたもので、ネパールで調査の環として行われている。この調査によって、その地域のリファンピン耐性が現在どのレベルにあるかがわかり、今後もこれを監視することで薬品に対する耐性の傾向を知ることができるだろう。DDS耐性を持つ部位を決定する分子学的研究が現在行われているが、耐性のメカニズムを明らかにするにはいたっていない。予測されたとおり、もしそれが葉酸の経路(folate pathway)における変化と関係していることがわかれば、マウスの足の肉趾で薬品の耐性をテストをすることなく、分子テストを開発できるだろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION