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2) 国際協力と業績評価

これは私が学生諸君から教えられた項である。成績・業績については我が国では上の者が下を評価する長年の習わしがあった。それもあまり客観的にではなく、何となくとか腹芸でとかいう習慣が潜んでいた。下が上を評価することは勿論のこと同列の仲間を客観的に評価することは日本の風習には馴染まないものと考えたり、むしろ忌むべきものとするしきたりが支配的だった。今回のフェローシップで学生諸君の討議に参加してみると日本の国際協力事業の成果について、どのような評価が行われるべきか真剣なディスカッションが繰り返し行われていた。JICAによる海外技術援助協力事業について、初期の頃はただ機械を贈ることのみであったとか、港を作ってあげたところ全く利用されない状態となって無駄遣いの典型であったとかの実例があった。しかしその評価がきちんと成されたかどうかは不明である。恐らく曖昧なままになってしまったのではないか。政府またはその関連機関による国際協力事業については所謂「NGO」による評価があってしかるべきではないのか、など厳しい意見があいついで出されていた。

この議論は帰りの飛行機の中でも熱心に繰り返されて帰国後の学会発表に連なったようである。以前から感じていたことであるが、欧米諸国では仲間同士の評価、下から上への評価を客観的に行って実績に反映していくことが自然と行われてきた。ドイツの大学では学生の評価がよろしくない教授(受講数が少ない)は大学を辞めなければならない。米国の学会では、一般参加者にセッション中に評価用紙を配り5段階評価を求めて、座長のセッション組立方、司会方法、各演者の発表内容などについて採点を求め、その結果は座長、演者などに通知があって次年度の参考とするように求められる。評価が悪ければ次の年はそのセッションは取りやめとなる、などなど自分で体験してきた。このような厳しい反省がなければ将来の向上は求めることが出来ない。参加学生諸君が更に向上心を養っていかれるよう切に望むものである。

 

 

 

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