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3月6日(金)

 

○本日のスケジュール、内容

国立療養所多磨全生園

1:ハンセン病の現状と国際協力 国立療養所多磨全生園園長 村上國男先生

ハンセン病の歴史

ハンセン病らしき疾患の記載は、旧約聖書にまでさかのぼることができる。日本でも、日本書紀に記されていた。病状の進行が筋萎縮や変形といった目に見える形で現れるため、ハンセン病(=らい病)患者は常に社会的差別と偏見にさらされていた。1873年癩菌が発見され、ハンセン病が遺伝病ではなく伝染病であることが確定した。

しかしその後も差別や偏見はなくなったわけではなく、日本ではらい予防法が制定され、伝染の恐怖や民族の浄化を旨としたハンセン病患者の強制隔離収容が行われていた時代もあった。

昭和20年代に入ると、化学療法の普及により患者数は減少し、らい予防法はざる法としてしか機能しなくなり、96年改定されるに至った。

 

ハンセン病の世界における現状、国際協力

世界においては未だ衛生状況の悪いアジア、アフリカなどで患者数が1万人あたり10人を超えており、国際医療協力によって制圧する必要のある疾患の一つである。

具体的にはMDT方式を確立すると共に、MDT終了後も再発および後遺症や合併症に対してもフォローしていく。

 

2:ハンセン病の基礎と臨床 国立療養所多磨全生園皮膚科医長 並里まさ子先生

ハンセン病とは、らい菌(1〜8×0.3μmほどの鞭毛のない抗酸菌)による感染症である。感染力は強くはないが、低温を好むことが特徴でそれゆえ、体の末端部の神経を侵し皮膚の知覚麻痺や筋の萎縮、変性をおこす。ハンセン病の病型分類は特異的細胞性免疫の点かららい腫型(LL)、類結核型(TT)、そしてその境界群に分けられる。

L型では細胞性免疫がおこらず、骨髄、肝、腎など体のあらゆる部位から菌が検出されるのに対し、T型では境界の明瞭な局所部位からのみ検出される。また、L型では液性抗体が大量に作られ、この結果III型アレルギーによって体の各所で炎症反応がおこる。

その治療に関しては、副腎皮質ホルモンの投与を中心とする。また、抗炎症剤のサリドマイドもよく用いられる。

 

講義終了後、園内見学、高松宮記念ハンセン病資料館見学、結核研究所へ移動

 

 

 

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