c)マンソン住血吸虫症
ウワンゴ地区では外来患者で180名中10名(5.6%)にマンソン住血吸虫卵の陽性者が認められた。昨年度の成績は789名中24名(3.0%)にマンソン住血吸虫卵が検出されており、対象が異なる外来患者が対象であるとはいえ、経年的にみるとマンソン住血吸虫症の陽性者は年によって若干の増減が認められていることが判る。最近中央アフリカにおいても道路が整備されて他地区との交流が激しくなり、従ってその地区の住民を駆虫しても新患者が転入して虫卵を散布する機会が多くなっているので、患者の治療のみならず、中間宿主対策無くしては完全撲滅は困難であると思われる。来年度は出来ればウワンゴ地区の中間宿主の調査を実施したいと考えている。本年度はこの診療所で現地技師が行った成績に基づいてマンソン住血吸虫卵陽性であった者に対してはプラジカンテルを投与した。
d)その他の嬬虫症
本年度は1例も認められなかったが、1998年3月に実施した昨年度の厚層塗抹法による検査を行った成績では、上記3蠕虫の他に鞭虫卵、糞線虫幼虫、ラブジチス幼虫、虫卵のみでは種類の判別が困難な吸虫卵、縮小条虫卵が検出されており、それ以外にもテニア条虫卵陽性者などが認められている。これらの患者には鞭虫症、糞線虫症、ラブジチス症患者にはサイアベンダゾールを、吸虫症、縮小条虫症、チェア条虫症患者にはプラジカンテルを既に投与している。
B)尿検査によるビルハルツ住血吸虫卵検査成績
ビルハルツ住血吸虫症検査のための尿検査は表2に示すごとくウワンゴ地区においてのみ実施し、本年度は外来で血尿を認めている16名についてのみ現地の検査技師が遠心沈澱法による尿検査を行った。その結果8名(50.0%)からビルハルツ住血吸虫卵が検出されている。昨年の集団検査受診希望者では尿の提出者252名中10名(4.0%)からビルハルツ住血吸虫の虫卵が証明されているが、本年度に50.0%と高率に認められたのは、血尿を排出し、ビルハルツ住血吸虫症が疑われる症例を対象にしたためであると判断される。何れにしてもこのバンギー郊外のウワンゴ地区では過去の報告書にも記したごとく、10月の雨期の終わり頃にはビルハルツ住血吸虫の中間宿主となるBul inus属の貝がみられるとのことであるので、ウバンギ河の支流での水浴などにより感染するものと判断され、この地区ではかなりのビルハルツ住血吸虫症患者が存在するのではないかと思われる。ビルハルツ住血吸虫症の患者に対してはプラジカンテルを投与したが、首都に近く数千人の住民が居住しているこの地区では衛生教育を含めた予防対策は困難で、かなりの努力が必要であると思われる。