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5)検査成績

糞便、皮膚、血液の各検査成績をまとめると以下の通りである。

 

A)糞便検査による蠕虫卵検査成績

厚層塗抹法のみでの糞便検査により見いだされた寄生蠕虫卵陽性者の成績を纏めたのが表1である。1998年3月に行った検査成績については既に昨年度に報告しているので、本年度は1999年3月に治療の対象者を抽出する目的で現地人技術者がウワンゴ診療所で行った成績と昨年度同地区で我々が行った成績を中心に比較することとする。本年度のウワンゴ診療所での蠕虫卵陽性者は180名中48名(26.7%)であった。このウワンゴの陽性率は7年前31%、6年前26%、5年前23%、4年前5.5%、3年前26%、一昨年度21.4%、本年度26.7%であったとこのウワンゴは同一対象者の追跡調査ではなく、集団検査受診希望者および診療所の外来患者を対象にしているため、治療効果判定などの意味は余りないが、地区全体の寄生蠕虫の蔓延状況をみるのには役立つものである。過去の経緯からみた結果、同地区の消化管寄生蠕虫の陽性率は大体25%前後であると判断される。なお今回は現地の検査技師が行った成績であり、鉤虫、蛔虫、マンソン住血吸虫以外の虫卵は検出されておらず、ややその技術に問題があるように窺われるが、外来患者を対象としているために全体の蠕虫卵陽性率は昨年度より高い値が示されており、我々が教示した厚層塗抹法による検査について、その技術を或る程度は修得したものと判断される。

以下の各蠕虫症について、厚層塗抹法による成績について述べることとする。

 

a)鉤虫症

首都バンギー地区ウワンゴ診療所の外来患者で寄生蠕虫疾患のうち最も高率に見いだされたのが鉤虫症である。ウワンゴ診療所では180名中48名(26.7%)が鉤虫卵陽性であった。その陽性率は昨年の集団検査の成績21.4%と大差は認められていない。このウワンゴ診療所は一昨年度から看護士1名、検査技師3名が増員され、現在は看護士3名と衛生検査技師6名が勤務しており、週に1回は医師の診察があり、また電気があるので遠心器および顕微鏡も常備されている。その他付設の産院には5名の助産婦が勤務しており、比較的恵まれたところである。陽性者に対してはコンバントリンの投与を行ったが、鉤虫症対策としては雨期と乾期の変わり目の年2回の投薬が好ましい。

 

b)蛔虫症

蛔虫感染者はバンギー地区のウワンゴからは厚層塗抹法で180名中15名(8.3%)の陽性者が検出され、外来患者の成績でも昨年度の7.4%など過去の成績とほぼ同様であった。蛔虫卵の陽性者に対してもコンバントリンの投与を行った。

 

 

 

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