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のである。高度(Malabo)、中等度(San Narciso、San Pedro)、低(Poblacion III)罹患率村落の1年間における肝超音波所見の悪化群の比率は夫々20.8%、10.0%、36.0%、36.4%であり、同改善群の比率は夫々16.7%、30.0%、8.0%、9.1%であった。また、再感染を推察する指標の一つとしてELISAのIgM抗体価及び血便の既往の有無を調べたが、夫々の村落におけるこれらの割合と超音波所見の悪化群、改善群の比率との間にも相関は認められなかった。本研究は1年間の超音波所見の変化のみを追跡したものであり今後の継続研究が必須と思われる。

本年度の調査で1年間にType 0が悪化する症例、並びにType 1及びType 2については悪化する症例も改善する症例も観察された。しかし、Type 3については改善した症例は認められなかった。今後、本研究を継続していくことにより日本住血吸虫症流行地において感染-治療-再感染-治療の繰り返しによる肝病変の経時的変化を詳細に解明できるものと思われる。さらに本症の病態生理及び病態発現機序についても解明していく所存である。また、Type 2はpraziquantelによる薬物療法によりType 1あるいはType 0に改善される症例が観察されたが、Type 3ではType 2やType 1に改善された症例は認められなかった。そこでType 2とType 3の間に可逆的病変と不可逆的病変の境界があるものと推察する。この境界病変についても治療歴、再感染との関連性について今後検討したい。

また、今回調査した1年の間にType 1から3に悪化した症例が観察されたので、日本住血吸虫症による肝病変が果たしてType 0から1⇒2⇒3と順次進行するのかも再検討を要する課題と思われる。

 

 

 

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