が全体的に簡単すぎるとして,兼岡らによって日本人向きの診断のためのガイドライン(表6:7項目以上でPMRと診断)が作成された6)。検査データを多く診断基準項目の中に取り入れたこのガイドラインを基に上記検査値を照らし合わせたところ,ここでも全例が9項目中7項目以上(平均8項目)該当し,診断基準を満たしていた。鑑別診断上,特に血清反応陰性性慢性関節リウマチ(seronegative RA)や多発性筋炎,成人発症Still病が問題となるが,病歴,理学所見,検査所見から全例とも除外しえた。さらに,PMRは診断基準参考項目にもあるように,治療的診断が重要であり,症例2を除き,治療を行った3例とも15〜20mgという少量のステロイドが著効を示し,診断の一助となった。なお,ステロイド長期投与に伴う副作用(耐糖能異常や脊椎の圧迫骨折,白内障,感染症,消化管出血など)は初期投与量が30mg/日以上,または累積使用量と有意に関係し,維持投与量が5mg/日以下では副作用が有意に減少するとの報告がある7)。本症ではESR,CRPを正常に保ちつつ,症状の再燃がみられぬようにステロイド剤を減量し,可能な限り使用期間を短縮する必要があると思われる。
表3 臨床検査成績
表4 Birdの診断基準
表5 PMR研究班の診断基準
表6 PMR早期診断のためのガイドライン(1986)
一方,診療所では腫瘍マーカーと腹部エコー,レントゲン写真のみからの評価であり,潜在する悪性腫瘍を十分に除外はできなかった。今後も注意深い経過観察が必要と思われた。
IV 結語
診療所で短期間のうちにPMR4例を経験したので報告した。PMRは頸・肩・腰・大腿部の筋痛とこわばりを特徴とし,一般に50歳以上に多く見られ,本邦においても決して稀な疾患ではないが,診断の決め手となる客観的な所見に乏しい為,単に肩関節周囲炎や骨粗鬆症と誤診されたり,意外と日常臨床の中で見落とされている可能性があると実感した。それ故,高齢者において急激に発症する筋痛、発熱,強い炎症反応が見られた際には原因疾患のひとつとして本疾患を常に念頭におくべきであると思われた。
なお,本論文の主旨は,第89回沖縄県医師会医学会総会において発表した。
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