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(2)その効果は、

a)全周波数にわたる域値の著しい改善

b)高音域の子音の聴取ができ、また、弁別もできることがありました。

c)母音ではあまり変動がありませんでした。

(3)通常の補聴器では十分な反応が得られないほど重度の場合でも試用時間による差はありますが、トランソニックでは確実な応答が得られることが多く、特に、子どもたちの表情の変化は著しく認められました。

(4)自己音声のフィードバックが容易でした。特に、サ行音を明瞭に発声できるようになった子が多く、発音指導にも役立つと考えられました。

(5)人工内耳そのものに匹敵するか、人工内耳手術前の音の反応の確立に有用であり、通常の補聴器と人工内耳の橋渡しの機器となりそうです。

しかし、これらの補聴器の効果は確定しておらず、今後の臨床によって確かめられていくと思われます。その意味では、以下の2点の検討が必要になると思われます。

・こうした周波数圧縮変換型補聴器のフィッティング手順の一般化

・装用後の聴取のプログラムに基づいた使い込みおよび使用環境を考慮した使い込み

 

このように、この型の補聴器は、いままで聴覚は使えないとして諦めていた最重度の難聴でも、音の検出には十分に使用可能な場合があることがわかり、聴覚活用の幅を従来よりひとまわり広げることができたと思われます。

 

3)耳かけ形FM補聴器、FMブーツ、赤外線補聴器

難聴の耳は、雑音や反響音に弱いことが指摘されています。従来の補聴器ではこうした音も全て一様に増幅してしまい、かえって聞き取りの力を低減させることになってしまっています。そこで、考えられたのがFMマイクです。話し手の口元にマイクを持っていき話し手の音声をより良い状態で遠くまで送り届ける無線式のシステムです。FM電波を使ったFMマイクと受信器を組み込んだ補聴器は、専用のFM補聴器として扱われます。現在では、FMが福祉法での交付補聴器の該当品になったため耳かけ形をベースにした耳かけFM補聴器が学童などで幅広く利用されるようになってきました。

FM補聴器用のマイクには、最近はACC機能が内蔵され、目的の音声の大小にかかわりなく一定のレベルで音声を拾い上げることができるようになりました。しかし、FM補聴器を利用する際には、補聴器本体の内蔵マイクとFMマイクとのバランスを一定程度取ることが肝心です。ASHAでは、本体の内蔵マイク入力65dB時の特性とFMマイク入力80dBの特性を一致させるようにバランスをとることを推奨しています。

この他、耳かけ形補聴器に専用のFM受信機を組み込んだブーツやアダプタをはかせることで、耳かけ形FM補聴器にすることも可能になってきました。また、赤外線を利用したシステムも開発されています。赤外線は、FM電波とは違って混信がなく信号が安定しているので音質の向上がはかれるようです。

こうしたFM補聴システムの効果としては、音に気づきやすくなることがあげられます。また、音韻情報レベルの聴覚活用のできている子どもたちですと、話しことばのききわけの能力は格段に改善されます。したがって、その効果は、これらの機器をどう使い込むかにかかっています。FM補聴器は、話し手にFMマイクを手渡す必要がありますので、自分が難聴であることを言わなければならないため、聞き手の主体性がより重視されるシステムです。

 

 

 

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