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JIS F2008-1997

船用アルミニウム合金押出形材 について

金子幸雄

 

1. まえがき

この度表記のJIS規格が制定、公布された。(財)日本船舶標準協会中小形船部会の5年間に亙る検討、審議を経た結果で、関係委員各位の絶大な御協力の賜で、この規格の公布によって、アルミニウム合金船の普及に弾みが付けば喜ばしい限りである。とは云っても今回の規格は、僅かに7種の寸法を取り上げただけであるから、九牛の一毛であろうが、これを足掛かりにしての規格の充実を期待する次第である。

このテキストは、この規格が公布された機会に、その成立の過程を理解し、活用を図って戴くことを願って、敢えて冗長を顧みず解説を試みたものである。

この規格はアルミニウム合金材の最大の特徴である、優れた押出特性を利用して、船舶の構造部材として効率の良い設計、工作が出来ることを狙い、このため押出部材の板部材に可変板厚として、軽量化を図ったものである。然し乍ら、船舶の設計に適用される規程には、このような可変板厚の場合の取り扱いが明記されていないため、折角可変板厚の押出形材を採用して重量軽減を図ろうとしても、最低板厚を規程板厚にするよう指示されることが少なくなく、このために却って押出形材を使用すれば重量増加になると云う風評を耳にすることがあった。幸い1996年1月より発効の海検第81号の「高速船構造基準」には、この取扱が明記されている。従って、小形船を対象とした「軽構造船暫定基準」にも当然この取扱が生かされる筈であるから、今後はこのようなことは無くなると思われる。

このテキストは板部の取扱を主体にして、JIS規格の使用法を解説して、実用の便に供しようとするものである。

 

2. 規格と使用法

このJIS F2008(以下単に規格と呼ぶことにする)は付録Aに掲げる通りである。規格の付録の解説によれば、使用法は明らかではあるが、取り上げた例は、軽構造船暫定基準によったアルミニウム合金製高速艇を対象としたものである。その後高速船構造基準が発効となったので、この場合も対象として解説することとした。

規格の押出型材は船体構造の外板、甲板、隔壁などを構成する板部と船底・船側ロンジ、甲板ロンジ及び隔壁防撓材を構成する骨部(防撓材)とを一体に押し出したものであることと、板部と骨部との付け根を増厚して、板の中央部に至る或幅の間にテーパを付けたことが特徴である。形状と各部の寸法記号を示したのが図1である。また、普通の溶接組立の場合との重量を比較したものが、図2である1)。図2で判るように大形になる程重量軽減の効果があることが窺われる。

船体構造の各規則とも防撓構造は平板と防撓材を溶接で組み立てる方式が前提になっていて、この押出部材のように、板部に板厚の変化を付けた場合の取扱は明記されていなかった。 しかし、平成8年1月1日付け海上技術安全局首席船舶検査官通達による「高速船構造基準」によれば、その第3章強度計算 3・2・3 押出形材の板部材に

「防撓材の心距間で板厚が変化する押出形材の板部材を使用する場合には、各防

 

 

 

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