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総括

 

本シンポジウムは、500名を超える参加があり、大盛況のうちに終えることができた。

参加者としては、地方公共団体、環境関係団体、農業関係団体、企業の他、定年後のライフスタイルを考えている多くの個人がおり、この問題に対する関心の高さがうかがわれた。

本シンポジウムでは、「新田園生活」の意義と、具体的な実践論が提示された。

まず、「新田園生活」には、今日の環境問題を解決する、社会モデルとなる意義がある。日本は、戦後50年、人、物資、資金を東京に集中させ、工業を興し、規格・大量生産を進めるというプロセスをとった。短期間で飛躍的な経済成長を実現し、物質的には豊かになったが、それは同時に、過疎・過密、水の汚染や大気の汚染などの環境問題、経済的格差といった「副作用」をもたらす構造でもあった。

自然の循環体系を無視した大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動、ライフスタイルはもはや限界に来ている。そこで、内藤教授が提案されたのは、「コンパクトな地域ユニットの中で、モノを循環させていくという仕組み」である。できるだけ地域内でエネルギーや、資源や、人が完結した形で廻っていく仕組みが求められるのではないかということであった。作物を作って食べ、ゴミは堆肥にし、また作物を作る・・・それはまさに田園で営々と続けられてきた営みである。循環型社会を足下から築いていくために、「新田園生活」は誰にでも始められる、大きな一歩であろう。

もう一つ、「新田園生活」には、日本の生活文化を将来の世代に伝えるという意義がある。かつて、日々の暮らしの中には、「文化」、「自然の理にかなった習慣」、四季の変化に彩られた「美しい景観・自然」があった。しかし、経済的な豊かさを求める中で、こうしたものはどんどん失われてしまったのではないだろうか。浜氏が言うように、四季の自然も含めた「美しい日本の暮らし」を、子供達、そしてその次の世代に体験させ、伝えていくために、田舎暮らしは意味深いものであろう。

また、本シンポジウムでは、「では、実際に田舎暮らしを始めるためにはどうしたらいいのか」という点でも、いくつかの興味深い指摘がなされた。地域の仲間にとけ込む努力をすること、地域の自然や人間関係のルールを守ること、いきなり移住するのではなくグリーンツーリズムなどから少しずつ挑戦していくこと等、茨城県八郷町の実践者の体験談なども交えながら、貴重な意見を聞くことができた。

以上が本シンポジウム全体の総括である。このシンポジウムをきっかけとして、21世紀の環境問題を解く一歩として、多くの方々が、「新田園生活」について関心を持ち、そして実践していくことを期待している。

最後に、シンポジウム開催にあたっては、国際航業株式会社に大変お世話になり、ここに厚く御礼申し上げる次第である。

 

 

 

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