総括
本シンポジウムでは、地元からはもちろんのこと、関東や遠く熊本県水俣市からもかけつけ、総計50名ほどの参加者となり、予定終了時刻を過ぎても報告者の熱気のこもった真剣な話は続けられた。このシンポジウムを通じて、ニツ井町の持つ可能性と問題点とが、いくつか浮き彫りにされた。今後の活動如何によっては、ニツ井町の持つ潜在的なエネルギーを発揮できるかが問われることになるだろう。
ニツ井町では官民協力のもと平成8年より森の学校が開催され、森で遊び森を学ぶというテーマで都市住民と地元住民との交流が続けられてきた。今回の報告者の一人である西本氏のように第1回目からの参加者、いわゆる二ツ井ファンも少なくない。また、西本氏は森の学校を通じたネットワークを通じて秋田県産の杉をつかった在来工法による住宅を建てるまでにいたっている。このように、家づくり・住まい・暮らし方を真剣に考え、実際に行動する方が森の学校の参加者から出たのは、本企画の最大の成果であると言える。
さらにどうすれば第二、第三の西本氏を見つけ、育てていくことができるのかを真剣に考え、討議することは林業の町の活性化につながる重要なポイントだと思われる。必要なことは、さらなる一歩を踏み出すか否かである。
すなわち、町の一つのイベントとしてではなく、町づくりの一環として本格的に取り組み、真剣に地域のこととして本事業を戦略的に位置づけ、かつ継続して活動していくことが今、必要とされているのである。
同時に、地域住民の協力体制が必要不可欠となるため、住民及び行政が一体となって林業の町としてこうありたいという町の将来ビジョンを示す必要もあるだろう。
ニツ井町の可能性はその豊富な潜在資源である。特に外から見た貴重な資源とは何であるかを森の学校の参加者を通じて探り出し、該当する地域資源を積極的に活用した町づくりが活性化に至る一つの手法であるといえる。
地元の資源を活用した町づくりこそが、住民の自信や誇り、郷土愛につながり、外部へと積極的に情報発信することにつながっていくことであろう。そのようになればより多くの二ツ井町のフアンが訪れることも十分に期待できる。併せて、地域内の人づくりも平行して行うべきである。この点に関しても民間の役割を補う形で行政のサポートが必要不可欠となる。今回のシンポジウムでは大工・棟梁の技術を伝承させることの重要性に気づかされた。物として残らないソフト資源だけに、技が途絶えると言うことは地域の魅力を半減させるものでもある。町営住宅のような事例を増やして、質の高い大工・棟梁を育ててほしいと強く願うものである。
今後の二ツ井町の活動の息吹に期待をかけるものである。