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シンポジウム内容

 

1. 挨拶 丸岡―直氏

森の学校を通じた林業体験や、今の時代に森を守っていくことの難しさをお互いに学んで認識を深めながら、どうすればもっとい良い方向に向かうかを学んでいければいいなと思っています。

これまで山里、林業、木材というものは、軽く見られる時代が何十年か続いてきました。しかし最近になりまして、人の心の問題は、いよいよ森とか木とか、そのようなものでないと救えないような時代になりつつあるのではないかなと感じ始めています。

住宅の建て方にしても、日本古来の木材を大事にした建て方というのは、自分にとっても社会全体から見ても良いことだと思いますし、あるいは森を守っていく面からも非常に意味があります。そんなことをお互いに認識していくことが必要じゃないかなと思います。

今日は、いろいろな考え方をされている先生方の集まりなので、大変貴重な話が伺えて一緒に勉強し、さらに輪を広げていければいいなと思っています。参加された皆さんには、いろいろと大変だったかと思いますが、最後にそういう勉強をしてお互い交流が深まれば大変ありがたいと思っています。

 

2. 基調講演 今井俊博氏

最近、快適な暮らしという言葉がありますが、私は嘘だと思います。

快適とか清潔とかというのは、ここ100年ぐらいの間に間違った衛生観念として、西洋から入ってきたものです。明治のはじめ頃、日本にきた西洋人たちは日本人が非常に清潔であるとびっくりしていました。これは例えばお風呂によく入るということですね。日本は湿度が高くて、発酵しやすい風土なので、よく風呂によく入るということです。逆に、日本人は不潔であリシラミがわいていると言われ始めたのは、第二次大戦後のことです。2つの考え方、栄養はたくさんとった方が良い、清潔にした方がよいというのは間違った考え方だと思います。

現在の生活では、人間の体温と大気温との差がほとんどありません。いつも一定です。昭和37年頃、高気密・高断熱の空間の中で、空気の湿度・温度を常に一定にしておくエアコンディションの考え方、システムが西洋から入ってきたためです。もともとエアコンはアメリカの工場で温度・湿度を一定に保つために導入されたものです。アメリカやヨーロッパのように乾操した風土、つまリー年中乾操しているような風土においては、エアコンの中で人間が機械と同じように生活をしてもそんなに問題は起きません。

日本のようなモンスーンアジアでは、特に夏に高温多湿となるところではいろいろと問題となります。昔から頭寒足熱といわれてきたように、頭の方を冷たくして、足の方を暖かくした方が人間の健康には良いとされています。エアコンでは逆になるので、これを解決するためには室内の空気を撹絆しなければなりません。つまり余分なエネルギーをかけなくてはならなくなり、ますます悪循環となってしまいます。

日本の農村において里山から堆肥の原料となる落ち葉を集めなくなってきたのは昭和40年前後からです。それと柴刈りをしなくなったのも同時期です。時代とともに炭焼きがなくなり、春の山菜もあまり取らなくなりました。昭和40年を境にしてこれらの事は起こり始めました。

私が最近どんなことをしているかというと、3つの地方自治体とともに里地里山のプロジェクトを構想したり進めたりしています。その中で気がつくのは遊休地が増えていることです。特に茶畑、東北方面ではりんご園、九州方面ではみかん畑などです。桑、りんご、みかん等は、かつては外貨・ドルをかせぐために導入されたものです。農業を工業化して積極的に輸出したのですが、これが全部駄目になってきています。山間地だけではなく、商用地でも同じです。暮らしを支えていく社会が管理社会なんですね。アジア全体にその傾向が広がりつつあります。とにかく現金を握らないと何もできないのです。まず最初にそろえるのが家電製品、次に車。これが、私たちの暮らしを異常なものにしてきました。

 

 

 

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