はじめに
私たちが、「ふるさとの風景」として思い浮かべるのは、雑木林、田んぼといった「里地」の風景です。我が国の50%近くを占める里地地域は、長い歴史の中で、日々の暮らしや農作業を通じて、人と自然が共生するための様々な知恵が育まれてきた地域です。同時に、里地地域は工業・農業と暮らしとの関わりが密接で、地域内で適正な「物質・エネルギー循環」を実現することができ、21世紀の「循環・共生型社会」のモデルとなり得る地域です。
実際に、環境と共生した地域を創っていこうというパイオニア的な取り組みが各地で芽生え始めてきており、今後の展開が期待されています。
そこで、当財団では、先駆的な取組を行っている、あるいはこれから行おうとしている6地域(北海道標茶町、岩手県東山町、秋田県二ツ井町、長野県伊那市、愛知県美浜町、熊本県水俣市)において調査を行いました。それぞれの地域では、地域の自然環境や風土、歴史、生活文化を反映して、エコツーリズムやグリーンツーリズム、エコ産品開発、リサイクル、地域環境資源マップづくりなど、様々な取り組みが進められていました。
今回の調査では、現在行われている取組状況を把握することにとどまらず、今後どのように環境保全型里地づくりを進めていったらよいか、どうしたら地域の人々が元気に暮らしていくことができるか、地域の人々とともに考えていくよう、特に留意しました。このため、研究会委員に地元の方に入っていただくとともに、研究会をオープンにして地元の方にどんどん参加してしただけるような場も設けました。また、新しいアイデアを入れるために、他の地域の人々にも参加していただきました。
この結果、地域の人々が「普段見過ごしてたが、こんな素晴らしいコト、モノがあったのだ」と地域のよさを見直してみたり、「やってみればいらいらできるものだ」と新しいことに挑戦してみたり、大きな効果を得ることができたのではないかと思います。どのような取組も、地域の人々が主体的に動かなければ成功するはずがありません。
各調査地域では、今回の調査をひとつのステップとして、さらにいろいろな可能性を探り、実行に移していっていただきたいと思います。
また、今回の調査結果が、他の地域においても、これから環境保全型里地づくりを始めようとするきっかけとなれば幸甚です。
最後に、本調査は日本財団の補助を受けて実施されたものであり、ここに厚く御礼申し上げます。
(財)水と緑の惑星保全機構